研究課題/領域番号 |
18K12123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 麻実子 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (20582133)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロ波加熱 / 癌治療 |
研究実績の概要 |
本年度は、電場・磁場成分を分離して照射可能な空洞共振型マイクロ波照射装置を用いて、電場と磁場のどちらが癌細胞の死滅に影響するかを調べた。ヒト膵臓癌由来Panc-1細胞を35mmガラスベースディッシュに播種し、上記の装置を用いてマイクロ波を2時間照射した。マイクロ波は、ディッシュの中心温度が40℃となるように出力を調整した。その結果、電界が最大となる中心部にて細胞数が有意に減少した。また、JC-1を用いてミトコンドリア膜電位の測定を行ったところ、複数の細胞にてミトコンドリア膜電位差が消失していた。一方で、磁界が最大となるディッシュの上部と下部付近では、細胞数やミトコンドリア膜電位の有意な変化は見られなかった。 更に、マイクロ波癌治療を癌細胞選択的に行うため、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System: DDS)を用いたナノ粒子製剤の開発を行った。まずリポソームの作製、及びリポソームと抗体との結合反応について検討した。リポソームと抗体は、マレイミドとチオール基との反応を利用して結合させた。また抗体は、HER2のモノクローナル抗体であるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン, 中外製薬株式会社)を選択した。本抗体標識リポソームをHER2陽性細胞株であるBT-474 、及びHER2陰性細胞株であるMDA-MB-231に添加したところ、HER2抗体はBT-474細胞の表面のみに結合することが示された。今後は、リポソーム内に抗癌剤や磁性ナノ粒子を包埋し、マイクロ波照射との併用による効率的な癌細胞死誘導を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定通り、自作した空洞共振型マイクロ波照射装置を用いて、電場と磁場成分の細胞死に与える影響について解析することができた。更に、DDS医薬品の原型を設計することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DDS医薬品の最適化を行う。具体的には、リポソーム内に磁性ナノ粒子や抗癌剤を包埋し、マイクロ波照射との併用にて効率的な癌細胞の死滅誘導を行う。更に、リポソームと細胞膜との融合を促進させるための設計も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、細胞培養やDDS医薬品設計のための消耗品費が予定より少なく済んだため、余剰経費が生じた。余剰分は、次年度のDDS医薬品合成やin vivo用マイクロ波照射装置設計のための費用として計上する予定である。
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