研究課題
二次電子制動輻射計測によるがん治療用粒子線ビームイメージング手法において減弱補正を実現可能にするために、エネルギースペクトルの計測が可能なX線カメラの製作を行った。画像検出素子としてガドリウム・アルミニウム・ガリウム・ガーネット(GAGG)結晶によるシンチレーションアレイ(結晶サイズ1 mm×1 mm×1 mm、アレイサイズ22×44)を採用し、これを浜松ホトニクス製のSiPMアレイ(8×16)にオプティカルコンパウンドを用いて接着した上で信号読出回路に接続して検出器系を構成した。この検出器系を、前面に銀合金製のコリメータを持つ鉛製の放射線遮蔽箱の中に設置することでX線カメラを構成した。コリメータの形状は、粒子線イメージングに実績のあるピンホール型を採用した。次に、製作したX線カメラによって得られる生データをビーム画像に変換するためのソフトウェアを作成した、具体的には、ポジションマップの生成、結晶毎のイベント分割、エネルギー較正を行うためのプログラムを作成した。生データには2台ある読出回路のうち片方のデータが欠損しているデータがまれに含まれることがわかり、これを検出・排除するプログラムを作成した。完成したX線カメラについて、Am-241点線源による性能評価を行った結果、ピンホールから距離20 cmの位置において視野4 cm×8 cm 、空間分解能約2 mm、エネルギー分解能 17%(59.5 keV における半値全幅)が達成できることを確認できた。現在、本装置を用いて、重粒子線イメージング実験を行う準備を進めている。また、重粒子線照射環境下で本装置が正常に動作しない事も想定し、エネルギースペクトルの取得のみ可能な単素子の検出器(CZT検出器)の選定も進めている。次年度以降にイメージング実験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
X線カメラの製作が完了し、想定している性能が得られたため。
製作したX線カメラを用いて、治療ビームイメージング実験を行い、減弱補正手法の適用可能性を実験によって評価する。
X線カメラの製作および性能評価の実施が若干遅れたため、粒子線イメージング実験を次年度行う予定。これに必要となる部材(X線カメラの遮蔽補強、測定専用パソコン、照射ターゲット)を次年度に購入する予定。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 954 ページ: 161607~161607
10.1016/j.nima.2018.11.066
IEEE Transactions on Radiation and Plasma Medical Sciences
巻: 4 ページ: 253~261
10.1109/TRPMS.2019.2928016
Physics in Medicine & Biology
巻: 64 ページ: 135019~135019
10.1088/1361-6560/ab2072