昨年度に実施したがん治療用粒子線イメージング実験では、正常な治療ビームの軌跡を表す画像を取得出来なかったため、今年度はまず、モンテカルロシミュレーションを通して原因調査を行った。その結果、製作したX線カメラの画像検出器に使用しているシンチレーション結晶の表面に、遮光のために塗布している反射材が想定より厚く、二次電子制動放射線が反射材において吸収されてしまうことがわかった。そこで、シンチレーション結晶の反射材を塗布型からアルミ蒸着マイラー貼付型に変更した。改善を施したX線カメラについて、点線源を用いて性能評価を実施した結果、シミュレーションによる理論計算によって予測される感度と同程度の感度が得られていることを確認でき、カメラの完成に見通しをたてることが出来た。上記で製作したX線カメラは、シミュレーションによる原因調査に時間を要してしまったため、予定していた照射施設での実験日までに製作が完了せず、同じ反射材方式の別のX線カメラを代用して、がん治療用粒子線イメージング実験を実施した。実験は兵庫県立粒子線医療センターで実施した。241.5 MeV/uのエネルギーを持つ炭素イオン線を、照射台に設置したアクリル標的に入射し、標的の厚さを変更しながら、X線カメラにより二次電子制動放射線のエネルギースペクトルの取得を行った。その結果、モンテカルロシミュレーションによる理論計算結果と同等の側面厚依存性が得られ、二次電子制動輻射計測による減弱補正法の実用可能性を示唆する実測結果となった。
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