研究実績の概要 |
目的:誘電泳動を用いた結核菌核酸増幅法前処理法 成果:懸濁液の作製:誘電泳動法は検体の導電率が結果に影響するため、より導電率が低いBufferが必要であった。スクロースとグルコース水溶液に0.05% Tween 80%を添加した溶液に、イオン交換樹脂SMNUPBを加えてイオン交換を行い、導電率1 μS/cmのBufferを作製可能とした。 抗酸菌における最適な誘電泳動の設定(BCG培養液での検討):平成30年度の結果から再検討のうえ誘電泳動の最適設定は周波数100 kHz、電圧 10 V、流速 0.5 mL/hとした。流速をこれ以上とすると、捕捉率が低下した。抗酸菌における誘電泳動法は周波数100 kHzにおいて捕捉率が73.2-84.9%と最も高かった。 機器の改良:誘電泳動の機器をファンクションジェネレーターに変更した。以前の機器と比較し、チップに接続するチャンネルが2つに増加したため捕捉率の改善が見込まれた。また、捕捉面積を増やしたチップを使用することで、捕捉率の向上が見込まれた。上記検体、機器の改良により検体濃縮は最大16倍(検体量2 mLで誘電泳動を行った場合)となった。回収率はチップから菌の回収(チップ自体への菌の接着)に問題があるため正確に算出できていないが、40%程度と見込まれた。 LAMP法による結核菌検出の高感度化実証:従来のLAMP法で10回連続陰性の結果であった5,000倍希釈検体においてDEP法を用いた前処理後にLAMPを施行した結果、10回中8回で陽性結果が得られ、検査感度は有意に上昇した(p=0.0007)。一方で、DEP法においても10回中2回でLAMP陰性であった。定量的real-time PCRによる捕捉率の結果が示すように、DEP法の前処理においても全ての菌を捕捉、回収できていない。この点をさらに改良する必要が考えられた。
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