研究課題/領域番号 |
18K12126
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
上村 和紀 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10344350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血行動態モニター / ストレスフリー / ウェアラブル / 循環管理システム |
研究実績の概要 |
今回の研究では、重要な血行動態指標である血圧・心拍出量・左右心房圧を無侵襲的・ストレスフリーにモニターするウェアラブル指向型機器(ストレスフリー全血行動態モニター)の基礎開発を行うことを目的としていた。まず開発途上のストレスフリー24時間血圧モニター(ABPM)の絶対精度を向上するべく、動物実験を追加し、モニター開発を行った。 このモニターでは薄型超音波プローブ(厚5mm)をカフと体表間に配置、カフ圧と同時に動脈血管径を計測、カフ圧と収縮期・拡張期血圧、収縮期・拡張期血管径の間に成り立つ非線形方程式を、低圧域でカフ圧を変化させ複数組取得、その連立方程式解から収縮期・拡張期血圧を推定する。カフ圧を50mmHg未満の低圧域に制限することでストレス低減・消失を可能にする。麻酔下成犬6頭にて、この方法の推定精度を検討した。カフと薄型超音波プローブを右大腿に装着、カフ圧を50mmHg未満の低圧域で変化した際の大腿動脈径を超音波計測、収縮期・拡張期血圧を推定した。動脈内留置カテーテルで血圧を実測し比較した。収縮期血圧の推定値と実測値は良好に相関(決定係数=0.78±0.08)、平均測定誤差は2.6 ± 18.9mmHgだった。拡張期血圧の推定値と実測値は強く相関(決定係数=0.85±0.08)、平均測定誤差は3.9 ± 7.9mmHgと良好であった(IEEE Trans Biomed Eng. 2019, 66: 934-945.)。 今回の研究初年度に開発した方法は低ストレスなABPMを可能にするかもしれないと期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究において、まず最初の目的であった低ストレスな血圧モニターの基礎開発に一定の成果が得られて、学術論文(IEEE Trans Biomed Eng. 2019, 66: 934-945.)として発表できたので。
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今後の研究の推進方策 |
血圧モニター開発については、現時点で達成している血圧推定精度に関しては、特に収縮期血圧の推定精度に改善の余地があり、機械学習等の手法を取り入れて開発を発展させる方針とした。モニターで得られる生体信号として、カフ圧、血管径以外に、脈波到達時間などがあり、これらの信号を組み入れて、サポートベクター・ニューラルネットなどの機械学習アルゴリズムを用い、血圧推定精度の改善を図る方針。 心拍出量モニターと左心房圧モニター開発については、動物実験により上腕の動脈・静脈の血圧と流速信号および血管径のデータを取得し、これらの信号を用いかつ機械学習等の方法も応用して、低侵襲なモニターが可能か検討していく方針である。 循環管理システム開発については、重症心不全などで心機能抑制するものの使用が望ましいベータ遮断薬などを安全にストレスなく自動投与できるシステム開発など、これまでの開発を発展させていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額38,043円は国内学会出張の旅費に使用する予定であったが、旅費が安く抑えることができたため生じた。 (使用計画) 令和元年度には複数回の国内外の学会出張を予定しており、当初予定より費用が高くなる可能性もある。国内外の学会出張に使用する予定である。
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