研究課題
今回の研究では、ストレスフリー全血行動態モニターの基礎開発を行うことを目的としていた。昨年度までに開発したストレスフリー24時間血圧モニター(ABPM)(IEEE Trans Biomed Eng. 2019, 66: 934-945.)は、血圧推定精度特に収縮期血圧推定精度に改善の余地があった。この点を改善するべく、機械学習による精度改善を試みた。先行研究において麻酔下成犬6頭に血管収縮薬・血管拡張薬を投与し血圧を広範な範囲に変化させた際に得られた実測収縮期血圧(SBP)を教師信号とする、教師あり機械学習を行った。特徴量として、同時に取得された①予測収縮期血圧値・②予測拡張期血圧値・③実測収縮期血管径・④実測拡張期血管径・⑤脈波到達時間・⑥心拍数を用いた。Python・Scikit-learnを用い、アルゴリズム:Ridge回帰、Lasso回帰、Support vector回帰、Random forest回帰、Neural-Network回帰を用いた。グリッドサーチによるパラメータ(正則化など)の最適化交差検証法で、最も決定係数が高いアルゴリズムを採用した。 結果として検討アルゴリズムの中でSupport vector回帰が決定係数0.91と最も予測性能が良かったためこれを用いて機械学習行った。最終的な予測収縮期血圧値と実測値は平均誤差が0.7 ± 6.9 mmHgとなり、AAMI-ISOの基準も十分に満たす精度の改善を達成した(Uemura et al. ICBME2019、シンガポール、Abstract#:ICBME1066)。更に、血圧波形に基づいて心拍出量をモニターするシステムの開発を行い、ここにも機械学習を応用し予備検討で良好な推定精度を確認した。またベータ遮断薬の薬剤投与を自動制御するシステムの基礎開発を行った(2019年7月日本生体医工学会にて発表)。
2: おおむね順調に進展している
今回の研究において、研究第二年度の目的であった、血圧モニターの精度改善が達成でき、また心拍出量モニター開発の道筋もつけ、循環制御システムの開発も行ったので。
今後は、血圧のモニター開発に関しては、より時間連続的に無侵襲で推定する方法を開発し、実験における検証・特許申請・論文化を図っていく。また心拍出量モニターの開発を引き続き行い、血圧波形へ機械学習を適用する方法以外に、経食道心臓超音波ドプラーを用いる方法など、異なるアプローチの可能性を検討する。またこれらの低侵襲な血圧・心拍出量モニターの開発には、心臓血管系の基本的な機械特性・バイオメカニクスに関する、静的動的な数理工学的モデルの確立と、モデルを有効にモニター理論への適用することが必須である。心臓血管系数理工学的モデルに関する基礎研究も行っていく。
(理由)次年度使用額59,862円は国内学会出張の旅費に使用する予定であったが、旅費が安く抑えることができたため、および学会延期等により生じた。(使用計画)令和2年度には複数回の国内外の学会出張を予定しており、当初予定より費用が高くなる可能性もある。国内外の学会出張に使用する予定である。
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