研究実績の概要 |
2011年に国際放射線防護委員会 (ICRP) は、水晶体線量限度を約1/8に引き下げる勧告 (100mSv/5year, 最大50 mSv/year) をしたため、放射線従事者が放射線白内障になる危険性が危惧されており、国際的な課題となっていた。2021年には改正電離則により前述の新勧告通りに法令改正が行われたため、前法令に比べ、約250倍の人が線量限度超過の可能性があり、可及的速やかな対応と備えが必要となった。しかしながら、移動性と多様性に優れた適切な水晶体防護機器が存在しないのが現状である。本研究では、放射線従事者および介助者まで対応可能なさまざまな放射線検査に資する水晶体被曝防護機器の開発を試みる。 2018年度は、放射線検査(特にCT透視下インターベンション)時の平面および高さ双方の空間散乱線量分布の測定を行い、3次元的な基礎データを得た。2019年度は、実際に計測する線量計の最適な配置位置を検討し、防護眼鏡の外側で十分に計測できることを明らかにした(Ishii. H, Radiat Prot Dosimetry. 2019)。また、CT透視下インターベンション時の医師、看護師の放射線被曝測定を実施した (Inaba. Y, Diagnostics 2021) 。さらに放射線被曝防護機器のプロトタイプ作成を行った。2020と2021年度は、作成したプロトタイプ防護機器を臨床のTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)施行時に展開し、放射線被曝防護効果が約50%あることを検証した。2022年度には、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)に展開するために、ファントムによる基礎的実験を行い、25~95%の防護効果を得ることがわかった。2023年の最終年度には、改良型防護機器を作成し、従事者および介助者の防護効果を検証した結果、両者とも85~90%の防護効果が得ることができた。
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