研究課題/領域番号 |
18K12130
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山根 隆志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 客員研究員 (10358278)
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研究分担者 |
山本 健一郎 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (00434316)
松田 兼一 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282480)
西田 正浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (80357714)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血液濾過 / 遠心ポンプ / 血液フィルター / 血栓 / 溶血 |
研究実績の概要 |
ポンプの溶血レベルが、ヘパリン抗凝固回路内に発生する血小板凝集にどう影響するか比較した。溶血試験で高溶血、中溶血および低溶血だった3種類の遠心ポンプ(DP5A, DP5B, DP8)を使用した。遠心ポンプはいずれも羽根直径34mmで、直線流路2本およびダブルピボット軸受を有し、入口剪断応力が異なる設計としている。これら3種の遠心ポンプおよび150μmのメッシュフィルターおよび三角ソフトリザーバで回路を構成した。この回路に、ブタ新鮮血400mL(採血後2hないし4h)を充填し、実験開始時にヘパリン4mLを入れ、初期流量500mL/min以下となるよう回転数を2500rpm、および温度を37℃に維持して、流量計測とメッシュフィルターに捕捉された血小板凝集塊の観察を行った。ただし運搬中はクエン酸Naを入れ、直前に塩化Caで中和した。 その結果、3回の50分間実験で流量低下と溶血レベルとの相関が確認された。高溶血ポンプ(NIH=0.033)では流量が45%まで減少した後75%まで復帰したが、低溶血ポンプ(NIH=0.007±0.002)では80%まで流量減少したのち元の流量に復帰し、中溶血ポンプ(NIH=0.014±0.002)では流量変化はほぼ見られなかった。つまり高溶血遠心ポンプ(NIH>0.03)でない限り、ヘパリン抗凝固回路で流量減少をおこすような血小板凝集の発生はないと確認された。 モニター技術については、570 nm緑色LED素子とフォトICダイオードからなる溶血モニターを試作し、ヘモグロビン生理食塩水溶液を用いて検証したところ、肉眼的に検出できない低濃度域でも精度よく検出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白色血栓の現象解明と防止設計に関して:血流の高いせん断応力で血小板活性が誘起される(Shear-mediated platelet activation)という報告があるが、同様に高いせん断で誘起される溶血との相関を検討した。その結果、ヘパリン抗凝固回路では、高溶血(NIH>0.03)では流量が半減するほどの血小板凝集がフィルターに生じることが分かったが、中程度溶血以下であればフィルターが詰まるような血小板凝集の発生はないと確認された。ただしこれは、高せん断応力が血小板活性を誘起したことの確認であり、溶血が血小板活性を誘起したことの確認ではない。 モニター技術については、緑色LED素子570 nmとフォトICダイオードからなる溶血モニターを試作し、ヘモグロビン生理食塩水溶液を用いて検証したところ、肉眼的に検出できない低濃度域でも精度よく検出できた。共存物質存在下での評価が不十分であり今後検討が必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ヘパリン抗凝固回路における遠心ポンプに起因する血小板凝集は、ポンプ溶血レベルで抑制できることは確認できた。しかし、赤血球の沈澱を十分に抑え切れていないので、赤血球が沈澱しないような回路の構築を行い、血小板凝集条件の再確認を行ないたいと計画している。 溶血モニターの計測波長を570nmとしたが、共存物質存在下では赤色光のほうが適している可能性があるため、ウシ血液を用いて適切な波長について再検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のため3月に施設が封鎖され、最後の実験が実施できなかったため。
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