研究課題
2020年度、放射線治療品質管理機構の地域連携支援事業では、3回のパイロットスタディを予定していたが、Covid-19の影響で、以下の2回を遠隔支援形式で実施できた。2020年12月7日(月)、9日(水)、19日(土)に久留米大学病院で九州地区パイロットスタディを実施した。九州地区品質管理担当者や地域連携支援委員を中心に31名が参加した。リニアック装置出力線量の相違が照射野条件(10MV照射野5~20cm)で-4.2%と想定して、エラー原因の探求や遠隔者による支援、およびセキュリティ確保など、必要な課題を検討した。このパイロットスタディによって、TPS-QC,STD-Audit,財団の出力測定のデータ確認の手法によって多くの出力線量エラーを発見し解決できることがわかった。さらに、VPN接続による取扱データのセキュリティについても検証した。2回目は、2021年3月13日(土)、20日(日)に北海道大学病院において北海道地区パイロットスタディを実施した。北海道地区品質管理担当者や地域連携支援委員を中心に20名が参加した。リニアック装置出力線量の相違が照射野条件(6 MV照射野25×25cm、ウェッジ無し)で5.2%と想定した。VPN接続サーバを用いて支援者と遠隔対応者による情報共有によるエラー原因の同定が可能であった。TPS-QC,STD-Audit,財団の出力測定等のデータ管理の有効性が認められた。地区ごとに地理的環境の問題や連携の取れていない施設があることなどの報告があり。北海道地区のように地域連携に地理的な問題のある場合に、本研究で取り組む遠隔支援システムが必要であるという意見が出された。残りの東京地区パイロットスタディは2021年6月に実施する予定である。これにより全国のパイロットスタディが終了し、地域連携支援ネットワークの整備される予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
放射線治療品質管理機構では、2017年1月に「地域連携支援ワーキンググループ」(現:地域連携支援委員会)を設置し、国内各地域の放射線治療品質管理士の相互協力による品質管理の推進についての検討を開始した。2018年1月から全国を9地区ブロックに分けて、各地区における地域連携支援パイロットスタディを実施してきた。2018年9月に中国地区ブロックパイロットスタディ(以下、地区PS)において、STD-Auditによる遠隔支援システムの初期運用開始しデータ登録と情報共有を行った。2018年11月に四国地区PSにおいて、STD-Auditの測定手順や測定項目の追加などを行った。2019年2月に関東地区PSにおいて、TPS-QCをスクリーニング検査として導入した。STD-Auditの報告書作成機能に訪問者コメント記入追加した。2019年9月に東海地区PSにおいて、遠隔支援システムによる治療計画装置の原因分析が可能であることが確認された。2019年11月に関西地区PSにおいて、STD-Auditに画像データ整理機能を追加した。2020年12月に九州地区PSにおいて、事前データのweb登録システムの導入やVPNデータサーバによる支援運用を開始した。また、電位計・測定ケーブルの健全性チェック機能を追加した。2021年3月に北海道地区PSにおいて、VPN接続サーバの機能確認とTPS-QCやSTD-Auditなどの説明動画を開始した。このように地域連携支援事業に沿って、出力線量測定プロトコルの共通認識と測定手順書やチェックシートなど、統一した支援実施管理システムを作成した。また、訪問支援を実施する際に、収集された測定データや治療計画データをリアルタイムに確認する遠隔支援システムを開発した。
本研究は、放射線治療品質管理機構におけるリニアック装置出力線量に関する地域連携支援事業を基盤としている。出力線量などの情報を収集・分析・管理するためのデータサーバシステムを構築し、国内放射線治療の安全を確保することを目的としている。研究途中でCovid-19による感染拡大の影響もあり、2020年度に実施する予定であった東京地区ブロックパイロットスタディ(地区PS)が、2021年度に延期された。東京地区PSが終了し、地域連携支援ネットワークが整備される。今後は、以下の取り組みを行う予定である。1)施設データのweb登録システム:TPS-QCやSTD-Audit、およびガラス線量計データ等をデータサーバに統合する。品質管理士が、放射線治療品質管理機構のホームページからデータ登録できるシステムを構築する。これにより、多くの施設のデータを収集・分析し、施設の方々へフィードバックを行う。また、ガラス線量計を用いた出力線量測定第三者評価用申込書を自動作成する機能を追加する。2)セキュリティ強化と遠隔支援の充実化:データ共有ユーザの権限を個別に設定できる機能を用いて、データの登録、編集、閲覧の範囲を支援活動に合わせて設定運用していく。また、遠隔支援主体で実施するために、1)のwebデータ登録を利用して、できるだけ遠隔支援のみで地域連携支援活動を実施できる可能性を検討する。3)リニアック装置X線出力線量測定以外の支援項目検討:地域連携支援ネットワークが構築された後には、X線以外の電子線や、近年運用が高まっているFFFなどのビームについても支援対象を拡大したい。また、これまでの地区PSで意見の多かった装置立ち上げ時の支援についても検討を行う。
2020年度はCovid-19による感染拡大の影響で、緊急事態宣言が出されるなど、医療施設における研究実施に滞りが発生した。本研究においては、同年度に3つの地区ブロック(九州、北海道、東京)におけるパイロットスタディを実施する予定であったが、東京地区ブロックのパイロットスタディを年度内に実施することが出来なかった。同地区のパイロットスタディは、2021年6月に癌研有明病院で遠隔操作・会議で実施することになった。東京地区ブロックのパイロットスタディが終了すると、全国の地域連携支援ネットワーク構築が完了することになる。
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医学物理
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