研究課題/領域番号 |
18K12137
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
草川 森士 国立医薬品食品衛生研究所, 再生・細胞医療製品部, 主任研究官 (80462802)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 造腫瘍性試験 / 再生医療等製品 / 悪性形質転換細胞 / 三次元細胞培養 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、ヒト細胞加工製品中に混在する悪性形質転換細胞を軟寒天コロニー形成試験よりも簡便かつ効率的に検出するための新たな試験系の確立を目的 とし、天然物由来の新規ポリマーLA717を添加した培地を利用する新しい三次元培養法の検討を進めてきた。 2019年度は、LA717含有培地を用いた三次元培養法が様々な細胞種に適用可能かどうか検討すべく、U87-GFPおよびHEK-293GFP(悪性形質転換細胞モデル)それぞれについて、MRC-5(正常細胞モデル)との共培養実験を実施した。U87-GFPは従来の軟寒天培養では単一細胞から高頻度(約80%)にコロニーが形成されるが(発表済み)、LA717含有培地を用いた培養では、比較的高い頻度(約75%)でコロニーは形成されるものの、体積はかなり小さく、形状も安定しなかった。一方、HEK-293GFPは従来の軟寒天培養ではほとんどコロニーを形成しないが(未発表)、LA717含有培地を用いた培養では、高頻度(約85%)にサイズや形状が安定したコロニーが形成された。これらの結果から、LA717含有培地を用いた三次元培養法では、様々な種類の悪性形質転換細胞を効率的に増殖させ、凝集塊を形成させることが明らかとなり、正常細胞中の悪性形質転換細胞の混在評価における当該培養法の有用性が強く示唆された。 また、悪性形質転換細胞由来のコロニーを精度良く検出するためのコロニー染色法、画像解析の検討も進めた。三次元培養下の増殖細胞由来のコロニーに特異性の高い蛍光試薬が複数見出され、蛍光強度等を指標にした画像解析プログラムを構築した。 最終年度は、LA717含有培地を用いた三次元培養法を利用した造腫瘍性関連試験の実行可能性の検証(スパイク実験、汎用性評価など)を引き続き実施し、それらの結果をとりまとめ成果報告する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養条件および画像取得方法がほぼ決まり、 様々な悪性形質転換細胞と正常細胞との組み合わせをルーチンに評価できる体制が整った。現在は、野生型のHeLaおよびHEK-293についてヒト間葉系幹細胞との共培養実験を進めている。悪性形質転換細胞由来のコロニーを精度良く検出するためのコロニー染色法、画像解析法を含めた操作の一連の流れを整理し、再生医療等製品のための造腫瘍性関連試験としてのプロトコルを確立し、モデル細胞を用いた性能評価の結果と合わせ成果報告する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、LA717含有培地を用いた三次元培養法を利用した造腫瘍性関連試験の実行可能性の検証(スパイク実験、汎用性評価など)を引き続き実施し、それらの結果をとりまとめ成果報告する。また、悪性形質転換細胞が形成するコロニーを効率的に検出するための画像解析システムを新たに構築する予定である。具体的には、オープンソースの画像解析システム(CellProfilerを予定)を利用するための解析プログラムを構築し、公開できるようにする。また、コロニー識別の性能向上を目指し、機械学習、深層学習を取り入れた解析方法も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
内訳に少し変更が生じた(2019年度は成果報告の機会がなく、旅費や論文執筆に関わる予算を物品費に当てた)ことで、結果として次年度使用額が生じる形となった。 これらは全て次年度の物品費として利用させて頂く予定である。
|