研究課題/領域番号 |
18K12139
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
谷川 ゆかり 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究部門付 (20344202)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NIRS装置 / 光学特性値 / 光学的生体模擬試料 / バリデーション |
研究実績の概要 |
2019年度は、2018年度に引き続き、光学的生体模擬試料(ファントム)の素材探索を中心に研究を行った。重合後の柔らかさと取り扱いが比較的容易なところから、シリコン樹脂を中心として、未重合の透明樹脂を用い、散乱体・吸収体を混入させ、未重合樹脂への分散状況を調べるとともに、重合への阻害の有無についても調べた。さらにこれらの樹脂を重合させ、重合時の発熱や反応時間についても調べた。 重合した樹脂を対象に積分球付き分光光度計を用いて透過率・拡散反射率計測を行い、重合後のばらつきについても調べた。 散乱体・吸収体の混入においては、ベースとなる屈折率が従来用いてきた硬い樹脂よりも低いため、散乱体を従来よりも多く混入させる必要がある。また、未重合の樹脂の粘性は従来の硬い樹脂同様に高く、重合に費やす時間が長いなども問題があり、樹脂への混入が困難である上に、重合中に混入させた散乱体・吸収体が底面に沈降し、重合後の樹脂の上面と下面で混入の濃度に違いが生じるなど、均質な試料作製法の確立には至らなかった。 一方で、従来使用してきた樹脂が製造中止となったため、新たな樹脂での試作を昨年度より開始、重合の状態について調べ、分光光度計を用いて透過率については、従来とほぼ同様であることを確認できた。さらに、散乱体・吸収体の混入方法についても試作を行い、最適な混入方法や重合方法を調べた。試作した樹脂の混入結果を調べるため、積分球付き分光光度計で透過率と拡散反射率を計測し、均質性を評価した。その結果、試料のばらつきは徐々に減少する傾向がみられた。 一方で、NIRS装置用ファントムの国際標準化に着手し、共同研究者らと協力して、日本発の新たな国際標準として予備業務項目に提案、ISO/PWI 4953が承認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
散乱体・吸収体の混入においては、ベースとなる屈折率が従来用いてきたエポキシ樹脂よりも低いため、散乱体を従来よりも多く混入させる必要がある。一方で、未重合の樹脂の粘性は高く、重合反応の時間が長いため、重合中に混入させた散乱体・吸収体が底面に沈降し、重合後の樹脂の上面と下面で混入の濃度に違いが生じ、均質な試料を作製できなかった。 一方で、従来使用してきたエポキシ樹脂が製造中止となったため、新たな樹脂での試作を昨年度より開始、最適な混入方法や重合方法を調べ、試料のばらつきは徐々に減少する傾向がみられるところまで製法を詰めた状態であった。
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今後の研究の推進方策 |
柔らかいファントムの製法確立のため、やわらかい樹脂への混入法を試しながらの試作を進め、均質な試料作製法の確立を目指す。 従来使用してきた樹脂試料作製法については、光学特性のばらつきを減少する傾向がみられたため、さらに試作を進め、作製法を確立する。 また一方で、NIRS装置用ファントムの国際標準化も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は2018年度より開始した事務職出向の影響でエフォート率が10%となったため、試作と情報収集、国際標準化への準備作業に十分な時間が取れず、素材の検討においても、前年度に準備した素材を用いた試作が大半を占めたため、支出額が小さくなった。あた、年度末には学会発表の予定であったが、新型コロナウイルスの影響で学会が延期となり、旅費・参加費等も使用できず、さらに次年度使用額が増加することとなった。
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