研究課題
本年度は、てんかん患者のマルチモダリティデータ収集を継続して発作検知アルゴリズムおよび計測システムを最適化し、発作検知システムの試作と精度検証を行う予定であった。しかしCOVID-19感染拡大により、①代表者の施設における研究活動全般、特に患者接触を伴う研究活動の制限、②テレワークシフトによる研究支援員の活動制限、③一般入院診療制限による、研究被験者候補者の減少、④他施設訪問の制限に伴う他施設データ収集の制限 等、予測不可能であった事態が生じた。このため、システム試作と精度検証は困難となった。従って研究計画を変更し、既存の学習用/検証用データを豊富に所持している心拍データに基づく発作検出アルゴリズムの精度を高める取り組みを重点的に行った。まず、66名のてんかん患者における85回分の多様な型の発作と、221時間分の発作間欠期データを用いて、機械学習の手法であるautoencoderによって発作間欠期と発作時を識別するアルゴリズムを構築した。識別性能は、受信者動作特性曲線における曲線下面積(AUC、1に近いほど高性能)において0.92と良好であった。また、学習データと異なる対象者のデータに対してアルゴリズムを適用し、アルゴリズムの汎用性を検証するとともに、脳内のてんかん性放電を鋭敏に検出する頭蓋内脳波計測中の患者の心拍データに対してアルゴリズムを適用し結果を精査した。また機械学習手法の最適化や発作型ごとの性能検証を行い、焦点性てんかんの二次性全般化発作に対して多変量統計的プロセス管理に基づくアルゴリズムを適用した場合、最適条件ではAUC=1を達成した。全期間を通じて、心拍データのみを用いて、比較的軽い発作も含め高性能で発作検知が可能なアルゴリズムを構築できた。今後、本アルゴリズムを代表者らの有するシステムプラットフォームに実装し、プロトタイプ構築および精度検証を目指したい。
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