研究課題/領域番号 |
18K12143
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
花房 昭彦 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10547839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 義肢装具 / 設計システム / シミュレーション / CAD |
研究実績の概要 |
義足に関しては,断端を圧入する形で挿入するため,ソケットの形状を個人の断端形状に合わせて生成する必要がある.このためソケット挿入後の断端部の脂肪,筋肉等の組織の分布,ソケットとの接触圧力の状態を知ることが重要である.本年度は,断端形状の異なる3名の被験者のMRI計測データから骨部,筋肉部,脂肪部の組織別に人体モデルを構築した.動的有限要素解析ソフトLS-DYNAを使用して,ソケットへの圧入シミュレーションを行った.対象としたソケットを挿入した状態のMRI計測データを使用し,シミュレーションとの比較を行った.また遠位部4,近位部4の計8個の圧力センサを搭載したソケットを被験者に装着し,立位時の計測圧力とシミュレーション値の比較を行った.挿入シミュレーションの結果,ソケットの近位部の誤差15 % 以下に対して,遠位部は23 % 以下と誤差が大きくなった.圧力の比較では,シミュレーション値と計測値間の決定係数が0.88と高い相関関係となった. 短下肢装具に関しては,3Dプリンタにより製作した装具の可撓性を評価した.共同研究先のコニカミノルタで製作した試験機による曲げ試験の方式が,どの程度歩行の条件と合っているか検証するため,歩行時と同じ足関節角度だけ底屈と背屈を行い,本大学による歩行シミュレーション結果との比較を行った.試験機による歪量が0.002大きく試験機が歩行時と比較して過大に変形されていることが判った.また足首部の太さを変えた2種の3Dプリンタ製の短下肢装具装着歩行と歩行シミュレーションの結果を比較した.足首部の背部,中央,左右に3枚の歪ゲージを装着し,被験者1名による歩行計測実験を行った.シミュレーション結果,歩行計測結果共に,中央の歪と左右の歪が逆傾向の変化となること,足首部の細い短下肢装具の方が歪の大きくなることが確かめられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
義足に関しては,様々な形状,組織量の構成の違う断端のモデリングを行い,ソケットに圧入した時のシミュレーションを行うことができるようになった.このことにより,ソケット内の組織の圧縮状態や圧力分布を解析することが可能となった.この結果を利用して,今後ソケットの最適設計への応用を目指していく.しかしながら現状では歩行時の負荷の状態が考慮されていない. 短下肢装具では,シューホーン型の短下肢装具に関して,3Dプリンタで製作した装具の可撓性の検証を実測とシミュレーションによって行った.また足首部の太い形状と細い形状の2種類の形状に関して,歩行時の歪量の計測と歩行シミュレーションによる歪量の評価を行うことが可能となった.歩行シミュレーションによっても短下肢王具の歪変化傾向が再現可能なことが判った.この結果を利用して,今後装具の最適設計への応用を目指していく予定である.ただし,現状では障害者の歩行の状態が考慮されていない,また2種類の形状に対してしか評価を行っていない状況である.
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今後の研究の推進方策 |
義足に関しては,歩行時のソケット内の圧力変化の状態をシミュレーションできていないので,そのシミュレーションが行えるようなモデルと方法の開発を行う.歩行時のソケットと断端部の接触圧力に関しては計測済みなので,その結果との比較検証を行う.また被験者についても追加する予定である. 短下肢装具に関しては,タイプの異なる被験者数を増やす.その歩行特性を歩行シミュレーションに導入する方法を考案する.また形状に関しても,3Dプリンタで造形することを特徴とする形状,例えばトポロジー最適化を行った形状の生成を行い,歩行シミュレーションと試作,歩行時の歪計測による評価を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
試作した装具の数が想定より少なく,装具の試作費,歪計測に必要な歪ゲージなどの購入が想定より少なかった.次年度に試作装具の数を増やして実験するのに使用する予定.
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