研究課題/領域番号 |
18K12143
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
花房 昭彦 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10547839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 義肢装具 / 設計システム / シミュレーション / 動的有限要素法 / 短下肢装具 / トポロジー最適化 |
研究実績の概要 |
大腿義足と短下肢装具を対象として研究を進めている.大腿義足に関しては,断端を圧入する形で挿入するため,ソケットの形状を個人の断端形状に合わせて生成する必要がある.これまでに個人の特性を考慮するため,断端形状の異なる3名の被験者のMRI計測データから骨部,筋肉部,脂肪部の組織別に人体モデルを構築し,動的有限要素解析ソフトLS-DYNAを使用して,ソケットへの圧入シミュレーション,歩行時の動的有限要素解析を行い,ソケット内の圧力変化の解析を試みている. 短下肢装具に関しては,3Dプリンタによる製造に適した形状の生成を試みている.トポロジー最適化を行うことにより,重量の軽減,通気性の改善を目指している.短下肢装具モデルのふくらはぎ部を設計領域に設定してAltair社のInspireを用いて,設計領域を全体の体積に対して,30%,40%,50%まで減少させるトポロジー最適化を試みた.この最適化により生成した形状の短下肢装具の3Dプリンタによる試作と歩行実験を進めている.またこれらの短下肢装具を下腿に装着したときの歩行シミュレーションを,動的有限要素法解析により進めている. 2020年5月26日に開催された 11th Asia Pacific Conference on Medical and Biological Engineering (APCBME2020)では,オーガナイズドセッション:Current Technology in Prosthesis, Orthosis and Rehabilitation を主催し,本研究課題に関連する研究2件を含む7件の発表をベトナム,マレーシアの大学から発表いただいた.また本研究による短下肢装具最適化形状の生成については,Altair最適化コンテスト2020の最優秀賞を受賞することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は前期に学生の入構が禁止され,十分な進捗を得ることが困難であった.特に実験を実施することに支障をきたした. 義足に関しては,様々な形状,組織量の構成の違う断端のモデリングを行い,また異なるタイプのソケットに圧入した時のシミュレーションを行うことができるようになった.また断端形状を整え,皮膚の保護、軟組織とソケット間の摩擦の低減が可能なライナー装着時の圧力分布の解析も進めた.新しい被験者によるデータ取得を実施することができなかった. 短下肢装具では,トポロジー最適化とシミュレーションにより,剛性をあまり低下させることなく,重量の低減可能なことがわかった.4種類の最適化形状の短下肢装具を試作し,歩行実験を実施したが,被験者1名による結果しか得られなかった.また,歩行シミュレーションに関しては,4種類の最適化形状装具装着時のものは未実施の状態である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は最適化形状の短下肢装具を中心に研究を進めていく.前年度試作した短下肢装具は,厚さ4mmで造形したが,さらに軽量化を目指して,薄型化したものを再作成する予定である.また歩行実験も充実し,被験者の増加を進めていく.歩行シミュレーションに関しては,4種類の最適化形状装具装着時のものを実施し,形状間の比較,歩行実験との比較を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響によって,前期は学生の大学への入構が禁止され,十分な進捗を得ることが困難であった.特に実験を実施することに支障をきたした.また学会もオンラインでの開催となり,成果発表に用意していた旅費を使用する必要が無かった. 今年度,さらに軽量化を目指した短下肢装具の試作,追加歩行実験に必要なひずみゲージとアンプなどの計測装置購入,データ処理・保存用の計算機購入に使用する予定である.また成果発表のための学会参加,投稿費にも使用する予定である,
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