研究課題/領域番号 |
18K12144
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
片山 富美代 桐蔭横浜大学, スポーツ健康政策学部, 教授 (70309649)
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研究分担者 |
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 教授 (80257427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コロトコフ音 / 波形解析 / 人工知能 / AI解析 / 血圧測定 |
研究実績の概要 |
コロナ禍2年目にあたり、これまでのディケアセンターなどでの実験ができない状況が続いているが、これまで蓄積してきた600人超のK音波形の分析に集中し、一定の結論を得ることができた。この先、実験再開ができれば、分析結果の検証を中心とした計画を遂行する準備が整ってきている。 今年度活動実績としての1点目は、データの修復とノイズの除去である。それぞれスプライン関数による補間法(修復)と、ローパスフィルタによるノイズ濾波で対応できることがわかった。またこのための処理プログラムを作成し、全データに適用し(内、5%のデータは強ノイズのため修復不可能と判断済)実用に供せることを確認した。 2点目は、1点目の処理で得たK音波形と疾病の対応表作成である。ここでは、K音の波形を類型化し、各類型に対応した疾病を同定する帰納的アプローチと、逆に疾病からその兆候が示すであろう波形を同定する演繹的アプローチの両方を試した。前者については、例えば、耳で聞いて明瞭でない、濁っている、など異常なK音を示した被験者を年齢、既往症などの軸から調べた。一方、後者については、疾病として心疾患に焦点を当て、この疾患を既往症とする被験者(全7名)に共通するK音波形の特徴を調べた。いずれのアプローチからも多くの知見がえられてきた。 本研究では、最終的には上記の対応表とAIの援用により、K音の計測の場で疾病有無の判断を迅速に下せることを狙いとしている。今年度は、K音波形を画像に変換し、AIの画像処理ツールが利用できるように工夫した。例えば、心疾患を示すK音波形を同定(すなわち、対応表を作成)し、この波形の画像をAIの類似度判定の教科書データとして用いることで、AIによる疾患有無の判定が可能になると見込んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の中、対応可能な事項はほぼ全て検討した。以下に主な2項目を中心に進捗を記す。 1点目はデータの修復、ノイズの除去である。600超の全データの中で、約30%で頭打ちがあり、修復を要した。特に頭打ち対応は難度が高く、フィルタ、ウェーブレット分析など数か月検討した結果、元波形の特徴を最大限保持し修復できるスプライン関数による補間法を得た。これにより、現在の測定法では避けがたいデータの頭打ちとノイズ混入の問題が解決し、今後とも本測定法を継続していける見通しを得た。 2点目はK音波形と疾病の対応表作成で、本研究の核となるものである。今年度は、上記のように、類型化したK音波形から、各類型に対応した疾病を同定するため、KJ法を活用した結果、K音を大局的には数個のグループにまでまとめることができた。ただし、被験者、あるいは同一被験者でも測定回毎にK音のチラバリは非常に大きく、1対1対応表の作成までには至っていない。類型化は、K音波形に出現する疾患の兆候を漏らすことなく拾い上げるアプローチであり、今後とも、実験データを積み上げながら対応表作成につなげていく。逆に疾病からK音の特徴同定では、今年度は心疾患に特化し、これを既往症とする被験者(全7名)に共通する波形の特徴を調べた。その結果、本疾患は、波形から数値化した、ピーク高さ、半値全幅、周波数成分(代表50Hz値)の3値によりその兆候を把握できそうなことが判明した。さらに、波形から3値を自動的に数値化できればAIが活用できる。しかし、波形によっては自動的な数値化は難しいという課題があり、解決策を検討した結果、数値の代わりに波形を画像に変換(極座標利用)する策を得た。画像への変換は自動化が比較的容易で、かつ、出力される画像の情報は3値と同等であることも確認できAI活用への道が開けてきたところである。
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今後の研究の推進方策 |
2022(令和4)年度は、昨年度にK音波形を画像に変換(極座標利用)することに目途がたったことから、今年度はAIの画像認識技術への適用に着手する予定である。 また、コロナ禍により実施できていなかった、高齢者を対象としたディケアセンターでのK音計測を再開し、K音データの積み増しを行う。特に心疾患については、既往症とする被験者を継続的にフォローすることにより、K音波形/画像が心疾患の予兆であることの裏付けを得たいと考えている。 さらに、可能であれば、医療機関の協力を得て、心疾患の症状/兆候のある方のK音波形の計測を実施することにより、本研究の主眼とするK音波形と疾病の対応表作成を加速できるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
複数回の緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が実施されたことから、デイケアセンター等でのK音取得が実施できなかったため、旅費等の使用ができなかった。今年度は、可能であれば学外でのデータ取得を実施する予定である。
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