研究課題/領域番号 |
18K12145
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
郷 貴博 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (10782675)
|
研究分担者 |
東江 由起夫 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (90460328)
勝平 純司 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (00383117)
須田 裕紀 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (20567200)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 大腿義足歩行分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大腿義足歩行においてソケット内転角のアライメント不良の場合に現れる異常歩行および代償動作を客観的に分析し、その歩行特徴について報告することである。具体的には大腿切断者を対象に、ソケット内転角が適切な場合と角度がそれぞれ過大・不足の場合の3条件にて大腿義足歩行を三次元動作解析にて計測し、このときに現れる異常歩行および代償動作を客観的に明らかにすることである。これを達成するためには三次元動作解析装置を用い、一定の条件下において大腿義足歩行を計測する必要がある。また被験者は実際の大腿切断者を対象とし、個々の被験者に適合させた大腿義足ソケットの製作が必要であると考えていた。したがって本年度は確実に計測を実施するための機器設備および義足構成部品を整え、実験計測用の義足ソケットの製作を実施した。 計測システムは新潟医療福祉大学に所有される三次元動作解析装置および床反力計を使用するため消耗品以外の新たな購入や調整は不要である。しかし計測に用いる大腿義足は個々の被験者に適合したものを製作・調整する必要があったため、アライメント調整用部品と最低限の構成要素部品を購入し、実験計測の準備を進めた。また意図しない異常歩行・代表動作を避けるため、計測用義足は被験者に適合したソケットを用いる必要がある。そこで本研究への参加に承諾の得られた被験者を対象に義足ソケットを製作した。さらに本計測の際のソケット角度条件について、適切な角度および調整不良による不適切な角度を含む3条件の設定を予備実験にて決定した。 また本研究に関連する情報を収集するために国際学会へ参加し、学会発表を通じた情報収集と、有識者との意見交換を行い、今後の研究方策について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
業績概要に記載した通り、本研究では大腿義足歩行を計測するため、常用義足を用いて独歩可能な大腿切断者を対象とする必要がある。また被験者ごとにソケットを採型・製作・適合し、これを用いた計測用義足を用いることと計画していた。被験者については現時点においても関係各所に依頼し、その確保に努めているものの、条件基準に適した大腿切断者の確保に時間を要した。さらに被験者ごとの研究用ソケット製作に着手しているが、十分な適合の得られる状態まで調整が完了していないのが現状である。ソケットは共同研究者の推奨するUCLA(University of California, Los Angeles)式坐骨収納型(IRC)ソケットとし、一般社団法人 日本技師装具士協会主催のセミナー資料に則り製作している。また共同研究者はこのIRCソケット製作についての経験が豊富であり、その監修を受けて製作を進めた。しかし、チェックソケットを用いた仮合わせでは十分な適合が得られておらず、計測用ソケットの製作に時間を要している。特に大腿義足ソケットは臨床においてもその製作には熟練の技術が必要とされており、十分な適合調整を行うにはかなりの時間が必要である。また被験者は遠方よりお越しいただく方が多く、時間的制約によりソケット調整の時間確保に限界があることも要因として挙げられる。 しかし計測システムや、計測用義足におけるソケット以外の構成要素の準備は順調であり、実験計測および解析は予備実験において検証済みである。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の当該年度進行状況として、被験者の確保および計測用大腿義足の製作、計測システムの検証を実施した。計測システムは新潟医療福祉大学所有の三次元動作解析装置および床反力系を使用し、目的の歩行動作の計測および解析が可能であることを検証した。また課題として被験者ごとの計測用ソケットの製作に時間を要していることが挙げられた。この解決方法とし、被験者ごとに計測用ソケットを製作するのではなく、被験者が日常的に使用しているソケットを用い、ソケット以下は当初の計画同様に常用義足と同等なものを用いて組み立てるものとする。これにより、多大なる時間を要していたソケット製作が不要となるため、計画に沿った計測が可能になると考えられる。またその際のソケット条件として、日常的に使用しているソケットの適合が被験者の主観および義肢装具士の判断によって良好であると判断された場合のみ用いることと設定することで、今後の計測結果への影響を回避するものとする。 今後はこのように計測用義足を設定し、引き続き実験計測を実施する。解析はソケット内転角の調整が①適切、②内転角度過大、③内転角度不足の3条件にて義足側・健足側における各関節(義足側は各継手)角度やパワー、モーメント、また骨盤角度や腰部モーメント、歩行の時間因子・距離因子などを算出する。結果を3条件間で比較し、ソケット内転角の調整が不適切な場合に現れる異常歩行・代償動作とそれに伴う身体的負担を明らかにする。結果が整い次第、関係学会にて報告および論文投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の進行状況として、計画通りの被験者数の確保および計測の実施が出来なかったため、被験者や研究協力者への人件費や謝金の支払い金額が少なく、次年度使用額が生じた。次年度は被験者数を増やし計測を実施する予定であるため、主にこれに伴う移動費・人件費・謝金の支払いに使用する予定である。また新たな計測システム導入にむけた計測機器代や学会参加費・論文投稿費として用いる。
|