研究課題/領域番号 |
18K12146
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岡田 志麻 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40551560)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NICU / 非接触モニタリング / 睡眠-覚醒リズム |
研究実績の概要 |
本研究では,「NICUの看護ケア」×「ロボティクス」による機能的クベースの開発を行うことを目的としている.NICU内での看護技術を一般化するために,ロボティクス技術を用いて必要な機能をクベース(新生児ケア用の専用保育器)に持たせる.機能的クベースで実現する機能は下記のとおりである.1.看護師の目(モニタリング)=新生児の体動計測:画像センシングを用いて,早期出産児の体動を無拘束非接触に計測する.2.看護師の判断,予測=機械学習による新生児の睡眠-覚醒判定:計測した早期出産児の体動をパラメータとし機械学習により睡眠-覚醒リズムを推定する.3.看護師の手=インフレータブルロボットによる新生児の体位変換,体位固定:空気圧駆動のインフレータブルロボットを変形させることにより早期出産児の体型に応じて体位変換,体位固定を行う. 本年度では看護師の目(モニタリング)=新生児の体動計測:画像センシングを用いて,早期出産児の体動を無拘束非接触に計測,を中心に研究開発を実施した.本年度のゴールは,体動とバイタルサインを用いて早期出生児の活動リズムを推定することにある.早期出生児の活動を24時間にわたって録画し,動画像データに対して差分処理を適用,これにより非拘束,非接触に体動の大きさ,頻度を算出した.また,対象児に行われる処置,治療時間についてはビデオソムノグラフィに基づいて記録し,その動作や時刻が対象児の生体リズムへ与える影響を確認した.また,同時に算出した体動とバイタルデータを解析し,自己相関処理を行うことで,活動リズムや生体リズムを推定するアルゴリズムを確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では看護師の目(モニタリング)=新生児の体動計測:画像センシングを用いて,早期出産児の体動を無拘束非接触に計測を中心に研究開発を実施した.新生児の睡眠は小児や成人の睡眠と異なり不明な点は多いが,数時間,数十分おきに睡眠ー覚醒サイクルを形成していることが確認されている.この部分に対してロボティクス技術のビジュアルセンシングを適応し,そのリズムについて検討した. 実験は修正月齢32週の早期出生児(F:3名,M:2名)を対象とし,NICU(新生児集中治療室)で実施した.クベース内の児の様子と生体情報モニタを24時間録画した.体動検出を行う際に使用したカメラはHanwha Japan製DC-NCR300U,広角撮影78度の赤外線webカメラである. クベース内の対象児の動画像データをグレースケールに変換し差分処理を実施,体動頻度や大きさ情報を抽出した.これらの情報を用いて自己相関関数を求め,コレログラムを算出,データの周期性を検討した.自己相関のラグは1秒毎に設定した. 実験の結果,体動による睡眠-覚醒に関連する活動リズムがあることが確認できた.最小で2時間11分,最大で2時間45分,全体を通して2時間から3時間の間で活動リズムを持つことが確認できた.修正月齢は同じであるにも関わらず,全被験者を通して一意の活動リズムでないことが確認された.その原因として,循環器やその他,成長度合いが個人で異なっていることが影響したと考えられる.今後の課題は被験者数を増やすことで,より精度の高い活動リズムの推定をはかること,また,活動リズムに合わせて医療スタッフの最適な処置時間を決定し,対象児の睡眠-覚醒リズムに及ぼす影響を確認する.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度では,対象児の体動情報をビジュアルセンシングにより抽出し,コレログラムによりゆるやかな相関で睡眠―覚醒に関連する活動リズムを確認することができた.2019年度の計画では,得られた対象児の体動により,睡眠―覚醒サイクルを推定するアルゴリズムを確立を目標としている.NICUの看護師へのヒアリングによると,新生児の体動には振戦や連続運動,頭部運動など複数種類の体動があり,それぞれが反射や反応など中枢神経の活動を反映している.画像処理により,これらの運動を分類し,複数種類の運動の頻度や時間間隔をパラメータとして用いて機械学習を行うことで新生児の睡眠―覚醒サイクルを推定するモデルを構築する.抽出した振戦,伸び,頭部運動,四肢運動,呼吸運動についてその頻度や周期をパラメータとして機械学習を行い,睡眠―覚醒サイクルを定量化する.睡眠―覚醒の2段階だけでなく,それぞれへの推移段階についても推定するアルゴリズムも確立する. 計画は予定通り進んでおり,実験や計測における問題や時間的な遅れも発生していない.2019年度も順調に計画が進めば,2020年度ではインフレータブルロボットを応用したクベース内児の体位保持装置の開発を実施する.
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