研究課題/領域番号 |
18K12147
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研究機関 | 第一工業大学 |
研究代表者 |
中茂 睦裕 第一工業大学, 工学部, 准教授 (30713408)
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研究分担者 |
大惠 克俊 第一工業大学, 工学部, 教授 (80388123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歩行ナビゲーション / インソール / 視覚障害者 |
研究実績の概要 |
令和元年度においては、アプリケーション実装を完了してインソールとスマートフォンとを連携動作させ、感性評価の実験を実施予定とした。これらのうち、まず最初にインソールデバイスとスマートフォン上のアプリケーションの通信方式を検討した。さらに、システム全体の制御系アプリケーションを構築した。RFIDに記録された位置データをインソールに内蔵したRFIDリーダによる近接無線通信で読み取り、その位置データはBluetooth通信によってスマートフォンのアプリケーションへ通知される。アプリケーション上で必要と判断した場合は、歩行者へ触覚刺激を与える。今度は逆にスマートフォンのアプリケーションで生成された刺激パターンをBluetooth通信によってインソールへ伝え、インソールに内蔵したリニア振動アクチュエータを振動させる。 このシステムを鹿児島県立鹿児島盲学校の協力を得て、当事者による感性評価実験をおこなった。課題は学校内の廊下を歩行中に目的の位置に差し掛かると振動刺激を与え、その位置に立ち止まるというものであった。被験者は5名で、1000個のRFIDをシート上に固定して廊下に設置して実験をおこなった。1名はスムーズに課題をクリアできたが、足裏の圧力が変化する条件では残りの4名は歩行中に振動を知覚することが困難で何度もトライすることとなった。そのため、急遽、足裏ではなく足首に振動刺激を与えるゴムバンド型のデバイスを追加で試作して実験をおこなったところ、被験者全員が課題をクリアすることができた。 令和2年度は引き続き足裏の圧力が変化する条件で適切な刺激位置を選定しながら、ナビゲーションアプリをの評価実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インソールとスマートフォンとの通信方式の検討に関しては、盲人が使用する事を前提とし、両デバイスのM2M通信はペアリングが容易なBluetoothを選定した。また、スマートフォンをM2Mゲートウェイとすることでインターネット接続できるように設計した。当初は、インソール側のマイコンボードをWebサーバとして構成してスマートフォンとWi-Fiで接続すること方がセットアップ手順が簡便だと考えていたが、当事者の盲人にはこの手順が困難で介助者の補助が必要だということが分かり、方針を転換した。 一方、触覚刺激については、歩行中に足裏の圧力が変化する条件では振動刺激は知覚しづらいことが分かった。そこで、2つの実装を試した。1つは先述したとおり刺激位置を足首に変更することである。ゴムバンドでリニア振動アクチュエータを固定したところ、当事者の盲人5名とも歩行中に振動刺激を容易に知覚できた。いずれも50~60代であった。2つ目は振動刺激ではなく、足裏の1点に対する押圧力の変化による刺激である。ボールねじ状の機構により微小な突起が足裏を刺激するデバイスを試作し、足裏の1点を押す圧力と触覚知覚との相関関係についての確認を行った。ただ本機構では上下方向が長くなる、刺激呈示部のマトリックス化が困難、足裏を押し上げる量の精度に問題がある等の問題があるため、それを解決する方法について検討を行っている。その一手法として、電気刺激による情報呈示に関する予備実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度はこれまでに得られた実験結果から足裏の接地圧力が変化する状況でも安定的に刺激を与えられる方式をfixした上でシステム実装を完了しする。足裏への情報呈示手法としては、機構の厚さを少なくする必要があると考えられるため、これまでの圧力による呈示に加え、電気刺激による情報呈示について詳細な検討および予備実験の結果に基づいたデバイス試作と評価を行う。 また、このデバイスを用いて歩行ナビゲーションを建物内でおこなうシステムを実装し、その完成評価およびフィールド実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会発表が新型コロナ対策でキャンセルとなり、その旅費を計上することがなくなり、繰り越し金が発生した。触覚刺激の方式を複数検討して評価、決定するために使用する予定である。
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