研究課題/領域番号 |
18K12150
|
研究機関 | 西日本工業大学 |
研究代表者 |
園田 隆 西日本工業大学, 工学部, 准教授 (70750339)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 膝継手設計 / 非線形計画問題 |
研究実績の概要 |
2020年度においてはCOVID-19の影響により、当初の計画にあった義足を用いた実験についてはCOVID-19の状況を鑑みて実施しない方向に計画を修正した。代わりに繊維結合型膝継手の設計法について、より発展させて体系化を進めるための研究を実施した。 2020年度前半では、人の膝関節のように転がりと滑りが同時に発生する関節変位の条件下において有効な手法を開発した。2019年度までの手法では、関節の接触面形状の凹凸の合わせ目で運動方向と拘束方向の設計を行っていた。新たに発案した手法では、繊維材料を利用した巻き付き拘束によって設計する。この設計を元にした継手を試作し有効性を調査し、転がりと滑りが同時に発生する運動を実現しつつ安定した拘束を実現することを確認した。 年度後半では、繊維の配置に関する設計を非線形計画問題として、拘束条件付きの最適化問題に関する数値解法への発展を試みた。前年度までは、膝継手設計に関わる多くの設計変数は、設計者が値を決定する手法であった。この旧手法での問題点は、設計者の経験に基づく設計値に依存していた点である。そこで、最適設計手法として知られる随伴変数法を応用することで解決を図った。目的関数として、外力(重力など)から受ける繊維への負荷および繊維長を最小化するように問題設定を行った。基礎方程式としては、繊維の変形と応力を考慮した。本設計法については、現時点では二次元の運動への応用に留まっており、前年度に研究したリー代数による三次元運動を考慮した実用的な膝継手への発展が課題となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度のCOVID-19流行によって、計画していた実験が実施困難となった。義足を用いた実験においては、安全のためには複数人による補助が必要である。補助人との接触などを考慮すると感染症による影響が想定された。そのため、研究期間延長を早期に決定し、膝継手の設計法を発展させる方向へ計画を変更した。設計法を発展させる方向性であれば、感染の影響を気にすることなく研究を推進できると判断結果である。しかしながら、繊維結合型膝継手の設計は、非線形計画問題となるために随伴変数法のような最適化手法を適応するのは、適切な問題設定が必要である。当初は、関節面の形状についても最適化を行うことを目指していた。しかし、関節面まで考慮した最適化は実現困難であると考え、より問題設定が容易だと判断した繊維配置の最適設計に絞って研究を進めるように方針転換を行った。これにより、二次元の運動を行う単純な繊維結合型膝継手についての繊維配置問題を最適化するに至ったが、実用的な設計問題への適用には課題が残っており、引き続き研究を進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度では、2020年度で実施できなかった実験を遂行する予定であるが、COVID-19の終息状況によっては2021年度も実施が困難な状況となる可能性が十分にある。対応策としては、2020年度から行っている最適設計の継続と、計算機上での歩行シミュレーションによる評価でもって研究推進を図る。また、最適設計に基づいて製作した膝継手の実機を製作し、モーションキャプチャーシステムを用いた運動評価および、外部委託による耐久性評価などを実施する予定である。 本年度前期までに、最適設計に基づいた繊維結合型膝継手の設計・製作を行う。二次元運動に限定した繊維結合型膝継手を製作する。実用上の問題は残るが、最適設計により得られた解の評価として必要となるために実施する。最適設計の進捗に次第では、三次元運動を考慮した繊維結合型膝継手の設計・製作も実施する。後期では、前期で得られた知見を元に、歩行シミュレーションもしくはモーションキャプチャーシステムによる運動評価実験を行う計画としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による遠隔講義への対応などのために、通常業務以外の作業が大幅に増加した影響によって2020年度前半の研究活動に割ける時間が大幅に減少した。また、感染予防の必要性から、複数人での実験の中止や県外への移動制限などによって、計画の実施に困難を生じた。予定していた研究計画の実施内容は大幅に変更する必要が生じ、次年度でのCOVID-19の終息を想定し、研究期間延長を念頭に予算使用を次年度に持ち越すことを計画した。そのため、2020年度では理論研究のみを行い、予算の使用を控えている。 次年度の予算計画では、当初より遅れた計画によって製造予定であった繊維結合型膝継手の製造費用が主な使用用途としている。それ以外には、学会発表や実験補助学生への謝礼金としての使用を計画している。 、
|