研究課題/領域番号 |
18K12152
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
伊藤 建一 新潟工科大学, 工学部, 教授 (10288251)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人体通信 / ボディエリアネットワーク / 医療・ヘルスケア / 磁界方式 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究成果は,以下の通りである. 1. 信号伝送損失の測定と改善:ベクトルネットワークアナライザを用いて,送受信コイル間の信号伝送損失を測定した.対象とする通信領域は,生体信号を計測する可能性が高い腕部や胴体などの上半身を対象とした.実用化を視野に入れ,非共鳴誘導結合の他に,無線電力伝送で提案されている低Q共鳴結合と高Q共鳴結合を用いて,信号伝送損失の改善も試みた.送受信コイルの位置関係として互いに向き合いかつ直線状に配置された条件に絞り研究した.解析周波数は100 kHz~10 MHz,送受信コイル間距離は人体通信の想定通信範囲と考えられる100 cmとした.非共鳴誘導結合では,これまでと同様に,各送受信コイル距離において信号損失量は基本的に2~3 MHzで最小となった.2種類の共鳴結合では,それぞれ共鳴周波数2 MHzで信号損失は最小となり,非共鳴誘導結合と比較して,10 dB~20 dB程度特性を改善できることを確認した. 2. 最適設計の検討:等価回路モデル解析によって,各結合方式の周波数特性を決める要因について検討した.非共鳴結合方式の周波数特性に関しては,信号損失量が最小となる周波数は自己インダクタンスによって,全体的な信号損失量は結合係数によって決まることを明らかにした.また高Q共鳴結合の共鳴特性に関しては,基本的に負荷抵抗と送信コイルペア間と受信コイルペア間の結合係数によって決まることを明らかにした.これは,磁界方式人体通信の最適設計に関する重要な指針になる. 3. 生体安全性の評価:数値電磁界解析によって,人体内及び周囲の電磁界分布及び局所SARを計算し,生体への安全性についても検討した.送信信号電圧1 Vの場合,体内電界強度は一般環境制限値より二桁以上小さく,局所SARは四桁ほど小さくなり,磁界方式は生体への安全性が非常に高いことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の計画どおりに研究が進展している.ベクトルネットワークを用いた測定系と数値電磁界及び等価回路モデルのベースが完成し,基本的な送受信コイル位置での各種解析を実施できた.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の研究計画どおりに実施する.まず,今年度解析した内容について,各種条件を変更してより深く検証する.次に,もう一つの信号伝送損失の改善手法であるマッチングネットワークを利用した方法について本格的に検討する.最後に,各種結合方式における通信特性を解析するための人体通信路信号伝送損失モデルを作成し,通信特性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計測機器(ベクトルネットワーク)が見込み予算よりも高額になったことと,測定系の予定外の支出を考量し,本年度は他の物品購入を見合わせた. 本年度に生じた残額は,購入予定の機器・ソフトウェアの購入に充てる.
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