研究課題/領域番号 |
18K12159
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
高戸 仁郎 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (10264904)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / 単独移動 / オリエンテーション / モビリティ / 触知標示 |
研究実績の概要 |
視覚障害者の道路横断には困難や危険が伴うため,支援設備として音響信号機やエスコートゾーン等が開発されてきた.しかし,それらは横断中の進路維持や横断終期の確認に役立つものの,横断すべき方向の定位が必須な横断開始時や横断初期相においては,環境騒音や付与された機能の観点から,十分機能していない.本研究では,この空白とも言える横断開始初期に明確な歩行方向に関する手がかりを提供するため,方向定位しながら歩行する方式を考案し,その方式に最適な触知標示の形状をデザインするために,歩行実験により定位精度を評価した. 平成31年度は、断面が円形の触知標示を用いて手掌と手背で使用した際の定位精度の違いを10名の視覚障害被験者による歩行実験によって明らかにした.定位精度は歩行開始から3m地点での通過地点と歩行開始地点を結ぶ直線が、歩行路中央の線となす角度を偏軌角度として評価した.その結果,今回用いた触知標示では手背を用いるよりも手掌を用いる方が偏軌角度が小さく,更に確信度も触知標示の使用法に差異が無いことから,触知標示の形状は手掌で方向定位しながら歩行しやすい形状が必要条件であることを明らかにした. これらの検証と並行して,歩行動揺計測システムを用いた歩き出し時の身体動揺の測定を行った.500mm以上の触知標示を辿る条件と触知標示を使用しない条件で歩行開始時の身体動揺を比較した結果,触知標示を辿りながら歩行を開始する条件で身体動揺が抑制されることも明らかにした.この評価法が様々な形態の触知標示を用いた歩行評価に適当である可能性が窺えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,視覚障害者が歩き出し時に方向定位を可能とする触知標示の形状を検討するため,手掌と手背を用いた方向定位方略による定位精度の違いを明らかにした.それを元に,手掌で辿りやすい形状の触知標示をデザイン,試作を継続して行っている.一方で,触知標示を手掌で利用した際においても歩行開始時の身体動揺は個人内でばらつきが見られ,その差は歩行速度による影響が大きいと考えられる.そのため,歩行速度をパラメーターに加えてより精度の高い分析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,歩行速度をパラメーターに加えて歩行開始時の身体動揺について詳細に分析を行うが,試作した触知標示についても実際の視覚障害者による評価試験を行い,新しい方式の方向定位方略の可能性を更に追求する.また実際の交通環境に設置する方法についても検討し,使用者である視覚障害者によるモニター調査,他の通行者へのインパクトなどを検討する.
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