研究課題/領域番号 |
18K12166
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横沼 実雄 呉工業高等専門学校, 電気情報工学分野, 教授 (00280446)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波スピーカ / 反響定位(エコーロケーション) / 材質判定 / 周波数成分解析 / 高次高調波成分の強調 / 連続インパルス音 |
研究実績の概要 |
本研究では,超音波スピーカ技術を応用して,視覚障碍者に反響定位(エコーロケーション)の修得もしくは使用を容易にする支援機を開発し,視覚障碍者の歩行移動を支援することを目的としている。反響定位の中でも歩行時障害物の情報,特に反響音からの材質情報の把握に重点を置き,視覚障碍者が反響音から材質の判断を行いやすくする,超音波スピーカからの発信音を研究してきた。主に,金属板,木材板,発泡プラスチック板を対象に,超音波スピーカからの高指向性発信音を照射し,反響音中の周波数成分解析と発信音波形の改善を行ってきた。これまで,主な対象物である前述の3種板材の音響インピーダンス解析結果と,反響音の周波数解析から,超音波スピーカ発信音の特定の高調波成分を強調する改善を行い,板材材質ごとの周波数成分分布差が大きくできることを電気学会中国支部大会で報告した。現在,反響音中の成分分布差があるとは言え,差異は十分でないことが課題である。原因として,前述3種の音響インピーダンスに大きな差がないこと,および方形波を基にした発信音波形改善では利用できる高次高調波成分が少なく強度も低いことが挙げられる。前者については他の材質板材を検討中であり,後者については連続インパルス音による広範囲の高調波成分を利用して,反響音中の周波数成分分布およびその時間応答も含めて検討を進めている。連続インパルス音による結果と今後の可能性について,昨年度電気学会中国支部大会でも報告した。今後は,周波数成分分布の差異を大きくしていくことで,視覚障碍者が反響音から材質判定ができるように改善していく。また,視覚障碍者の試験者を募り,実際に試用してもらうことも研究進行上必要となってくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り,反響音中の成分分布差があるとは言え,差異は十分でないことが課題である。原因として,前述3種の音響インピーダンスに大きな差がないこと,および方形波を基にした発信音波形改善では利用できる高次高調波成分が少なく強度も低いことが挙げられる。前者については他の材質板材を検討中であり,後者については連続インパルス音による広範囲の高調波成分を利用して,反響音中の周波数成分分布およびその時間応答も含めて検討を進めている。連続インパルス音を用いた反響音の測定結果から,広範囲で安定的に高次高調波成分が得られること,音響インピーダンス的に差異の小さい板材でも複数の周波数成分に差が出ること,他分野への応用の可能性についても,昨年度電気学会中国支部大会でも報告した。現在は他分野への応用も含めた実験計測と,強化学習を用いた新しい音響解析技術の適用を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで方形波を基に発信音波形を改善してきたが,利用可能な高調波成分が周波数範囲も狭く,高次高調波成分が小さくなりやすいため,連続インパルス音による広範囲の高調波成分を利用して,反響音中の周波数成分分布およびその時間応答も含めて検討を進めている。その手法としてFFT解析だけでなく,ウェーブレット解析を導入し,反響音の解析を行っていく。さらに,ウェーブレット解析には,その解析情報が二次元分布画像としても得られることから,画像解析用強化学習を適用した音響解析の可能性を探っている。これらの結果を基に,反響音特性の差異を顕著にしていき,視覚障碍者の材質判定につなげる。 また,視覚障碍者の試験者を募り,複数試験者からの反響定位,特に材質判定の結果を収集解析をしていく。加えて,他分野への応用についても探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大に伴い,学会中止等により当初予定していた学会参加の旅費使用ができず,複数実験者が必要な音響計測も数か月間の学校閉鎖により進捗が得られずに物品使用も少なかったため,次年度使用額が生じた。 今年度は,解析手法見直しに伴うソフトウェアアップデートおよび試作費等に対する物品費,学会参加等の研究旅費として使用する。
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