研究課題/領域番号 |
18K12174
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
黄 健 近畿大学, 工学部, 教授 (10282956)
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研究分担者 |
小谷内 範穗 近畿大学, 工学部, 教授 (50357034)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歩行車 / 歩行アシスト機器 / リハビリテーションロボット |
研究実績の概要 |
現在下肢部の弱い高齢者の自立歩行を支援するため、様々な歩行支援機器が商品化されているが、利用者の歩行意欲の向上を積極的に図るものはない。申請者らは、これまでに1自由度フリー回転機構付きの胸部支持パッドを有する歩行車を試作し、歩行運動の特徴を定量的に評価した。利用者が歩行する際に、胸部支持パッドを回転させることにより利用者腰部のスイングが自然に引き出され、ベルトを介して足が引っ張られることによって利用者の歩行意欲を促す。しかしながら、従来の胸部支持パッドの回転は受動的な機構であり、病気で足が踏み出せない高齢者には利用できない。そこで本研究は、利用者の歩行意欲を能動的に促進できる駆動型胸部支持パッドを有する歩行車を開発すると同時に、歩行バイオメカニクスの観点から歩行車補助効果の新しい評価手法を提案することを目的とする。 本年度は研究計画の初年度であり、まず駆動型支持パッドと歩行車の設計を行うと計画している。本研究では、身長180cm、体重100kgまでの利用者を想定しており、体の大きい人でも利用できるように、支持パッド駆動モータの選定計算と歩行車本体の機構設計を行った。また、歩行車のアシスト効果を定量的に評価し、歩行中に利用者の運動情報を測定するため、小型で多チャネル計測可能なシステムを構築した。本研究に係わる研究発表については、本年度において学術講演会での発表2件と研究紹介2件の実績があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
利用者の歩行意欲を能動的に促進できる駆動型胸部支持パッドを有する歩行車を開発するため、H30年度には駆動型回転機構を有する胸部支持パッドと歩行車本体の設計製作を目標としている。研究は当初の予定以上に進んでいると考えており、理由は以下に示す。 ①支持パッド駆動モータの選定 本研究では最大体重100kgの利用者を想定しているため、まず胸部支持パッドを回転させるための定格出力を満たすDCモータを選定した。 ②機構の設計と製作 現行の歩行車の機構設計を参考にしながら、身長180cmの利用者でも使えるように機構のシミュレーションの結果に基づいて歩行車本体を新たに設計した。また、当初の計画より設計が早くできたので、パーツの製作も行い、歩行車と支持パッドの組立ても行った。 ③力センサの選定 歩行中の利用者上半身の姿勢を図るため、支持パッドに取り付けるための力センサを選定し、計測アンプなどのシステムを構築した。 ④計測系の小型化 施設の廊下やロビーなどの場所でも歩行車を利用できるように、計測系を小型化する必要はある。本年度にはタブレットPCやスティックPCの利用を検討し、データ入力インタフェースを含めた計測系の構築案を固めた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗に引き続き、H31年度に歩行車のハードウェアの完成と歩行車の評価測定を目標にしており、具体的な計画は以下に示す。 ①歩行車の組立と動作確認 歩行車パーツの製作は予定より早く完了できたので試作品の組み立ては昨年度にすでに完了した。今年度はまず歩行車の機構部分の不具合を調整する。また、小型コンピュータの入出力を介すインタフェースの工作を完成したのち、試作した歩行車の動作を確認する。特に胸部支持パッドのモータ制御系を構築し、歩行運動をアシストできるように制御方法を検討していく。 ②歩行測定による歩行車の評価 本研究で提案された駆動型支持パッドを有する歩行車の評価を行うため、支持パッドの回転による上半身の姿勢変化、腰部のスイング量、膝関節の伸展と足首の回転などの運動情報を算出し、歩行車の性能を評価する。特に力覚センサの情報から算出された歩行者上半身の姿勢変化や膝関節と足の運動情報との関連に注目し、支持パッド回転の有無での結果を比較することで歩行特徴の変化や運動の改善を考察していく。
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