現在下肢部の弱い高齢者の自立歩行を支援するため、様々な歩行支援機器が商品化されているが、利用者の歩行意欲の向上を積極的に図るものはない。申請者らは、これまでに1自由度フリー回転機構付きの胸部支持パッドを有する歩行車を試作し、歩行運動の特徴を定量的に評価した。利用者が歩行する際に、胸部支持パッドの回転により利用者腰部のスイングが自然に引き出され、ベルトを介して足が引っ張られることによって利用者の歩行意欲を促す。しかしながら、従来の胸部支持パッドの回転は受動的な機構であり、病気で足が踏み出せない高齢者には利用できない。そこで本研究は、利用者の歩行意欲を能動的に促進できる駆動型胸部支持パッドを有する歩行車を開発すると同時に、歩行バイオメカニクスの観点から歩行車補助効果の新しい評価手法を提案することを目的とする。 初年度に駆動型支持パッドと歩行車の設計と製作を中心として進めてきており、次年度では、マイコンボードによる駆動型モータ制御系を構築し、支持パッドに負荷を掛けた状態での動作確認を行った。また、支持パッドに力センサ4つを取り付けて体重による圧力の計測系を構築し、圧力測定による動作確認を行った。最終年では、支持パッドを駆動するモータの制御系と計測系を連携するためのシステム構築を行い、さらにシステム機器の駆動電源のコードレス化を実現した。また、歩行車補助効果の新しい評価手法の候補としては、胸部の捩じりの回転と膝進展角およびかかと角度の運動が一定の遅れを生じて連動していることがパワースペクトル解析と相関評価によって明らかになることが分かってきた。本研究に係わる研究発表については、学術講演会での発表4件の実績があった。
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