研究課題/領域番号 |
18K12176
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
柿並 良佑 山形大学, 人文社会科学部, 講師 (40706602)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 現代哲学 / 政治思想 / 精神分析 / 情動 |
研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続き「情動」概念の理論的分析作業を行った。成果の一端は以下2本の論文に部分的に反映されている。 ・「キリスト教の非/脱構築――アンリとナンシー、否認された出会い」、『ミシェル・アンリ研究』日本ミシェル・アンリ哲学会、9巻、2019年6月;「断片の共同体:イェーナから〈われわれ〉へ」、日本シェリング協会編『シェリング年報』こぶし書房、第27号、2019年7月。 とりわけ前者においては、アンリとナンシーという二人の哲学者の間で起こり得なかった対話を再構成し、そこでの少なからぬ接点の一つとして、前者のいう「情感affetivite」が後者の論じる「情動affect」の問題系と無縁なものではないこと、後者がその思考の初期から前者を意識していたことを示している。 またとくに研究計画の第2点目である「情動概念の同時代的布置――精神分析・政治・哲学」に関わる成果として、以下のセミナーの形で発表することができた。同発表では他分野にまたがる「情動論」の系譜を素描し、まずは精神分析と切り結ぶ地点で生じてきた情動概念の哲学的争点を浮き彫りにするとともに、後半では現代政治思想との接点を探るものとなった。本課題の理論的作業が幸か不幸か「アクチュアリティ」を持つことの証左である。 ・「情動(の政治)について考えるとはどのようなことか?」、第36回新潟哲学思想セミナー、新潟大学、2019年10月25日。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表ではないが、前項のとおりセミナーや関連する論文に組み込む形で成果を発表できたことは幸いであった。この発表などを契機としてさらなる共同研究の可能性も生じてきており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴い、次年度、夏に予定しているフランス出張・資料調査の実施は検討中である。他方、秋には別途フランスで国際学会に招聘されているため、その機会を有効に活用し、資料調査や国際的な共同研究へ発展させる方向を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に残額で購入できる物品等がなかったため、有効に活用するため次年度に繰越とした。事務用品等に充当する予定である。
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