2019年度の研究実績は次の通りである。 4月に、応用哲学会サテライトイベント「社会学と哲学の協業に向けて━━質的調査・推論主義・プラグマティズム」において、「人類学者の目にプラグマティズムはどう映るのか」という題の口頭発表をおこなった。 6月には、応用哲学会の機関誌Contemporary and Applied Philosophyにて、「プラグマティズムと実在:パースの実在概念と実践的実在論をめぐって」というサーヴェイ論文を公刊した。この論文では、態度の実在性をめぐる現代の議論に注目することで、パースのプラグマティシズムの現代的意義を展望した。さらに、美学会の機関誌『美学』にて、「分析プラグマティズムからの提案━━分析美学の問い直しのために━━」という論文を公刊した。この論文では、現代のネオ・プラグマティズムの泰斗ロバート・ブランダムが提唱する「分析プラグマティズム」の考え方を、現代の美学の議論に応用した。 本研究においては、プラグマティズム関連書籍の翻訳プロジェクトもひとつの重要な柱となっている。かねてより本研究では、気鋭のプラグマティズム研究者シェリル・ミサックの手によるプラグマティズムの概説書The American Pragmatists (2013)の翻訳を単訳にて進めていたが、ついに本年度11月、この翻訳書を公刊できた。内容の豊富さをかんがみ、二分冊での公刊となった。さらに、共訳にて進めているネオ・プラグマティズムの泰斗ロバート・ブランダムのプラグマティズム論を集めたPerspectives on Pragmatism (2011)の翻訳も進捗し、校正刷りの段階に至った。
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