研究課題/領域番号 |
18K12182
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三木 那由他 大阪大学, 文学研究科, 講師 (40727088)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 話し手の意味 / コミュニケーション / 語用論 / 共同性基盤意味論 / 意図基盤意味論 / 共同行為 |
研究実績の概要 |
2019年度に報告したように、本研究は、すでに当初の研究計画に関しては完遂と言ってよい状態に到達している。だが本研究を遂行するなかで新たな課題として、「話し手が当該の発話でこれまでは意味できなかったことを意味したり、あるいは当該の発話が意味できるはずで話し手自身も意味しようと意図していることを意味できなかったりという、コミュニケーションの可塑性を捉えられるかたちで枠組みを発展させる」という目標が見出された。2019年度の報告にて述べたように、本年度はそうした発展の足掛かりとして、共同行為全般におけるアドリブ性を分析することを試みた。 既存の共同行為論においては、共同行為の参加者たちが行為に先立って共有している目的が、行為の進む方向を決定し、ひいてはそれがいかなる行為であるかをも決定するものと想定されている。そうした発想においては、共同行為には、当初は誰も想定していなかったにもかかわらず結果的に何かが達成されるといった可塑性は認められないものとなる。報告者はそうした既存の立場に対する反例を構築し、The 12th Biennial Collective Intentionality Conference International Social Ontology Societyにて、"Ad-lib Joint Action"と題する研究発表において報告した。また現在、同様の内容をより精緻にした論文を用意し、査読中となっている。 本年度の研究成果はそれ自体としては共同行為に関するものであり、コミュニケーションに関するものではないが、前年度までの研究において得られた共同行為としてのコミュニケーションという観点と組み合わせるなら、コミュニケーションにおける可塑的な側面を捉える足掛かりになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度報告書にあるように、すでに当初の研究計画は達成されており、現在はそれによって得られた枠組みをより現実的な社会的状況を捉えられるように精緻化させる、発展的な研究に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、当初の研究計画を超えた発展的研究として、当該の発話によっては意味できなかったことをその発話によって話し手が意味したり、逆に当該の発話によって意味できるはずのことを意味できなかったりといった、コミュニケーションの可塑的な側面を捉えるべく、すでに構築した枠組みの精緻化をはかっている。本年度の研究により、その足掛かりとなる可塑的な共同行為の理論を構築することができた。次年度の研究では、可塑的な共同行為の理論と、昨年度までに得られた共同行為論的なコミュニケーションの理論とを接続し、可塑的なコミュニケーションの理論の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
細かな差額による。
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