研究課題/領域番号 |
18K12185
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
信田 尚久 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (20734320)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カント / 自然哲学 / 形而上学 / 自然科学 / ニュートン / 思想史 / 科学史 |
研究実績の概要 |
当該年度、報告者は、カント力学法則が思想史・科学史に寄与する意義を有するのかどうか、この点を巡って議論するために、犬竹正幸教授(拓殖大学)を京都に招聘してフォーラム「カント力学および力学法則の射程と意義」を開催した。当該のフォーラムで報告者は、「批判期カントの『作用反作用法則』の再解釈」と題した原稿を発表した。本稿は、批判期カントの「作用反作用法則」に焦点を当て、まずカントの「作用反作用法則」がニュートンの「作用反作用法則」と概念的に異なることを示し、むしろカントが自身の「作用反作用法則」を論ずるにあたって、ニュートンの「力」や「作用反作用法則」を用いずに、カント自身の哲学的テーゼから、完全非弾性衝突における二物体間の運動量保存則を導いている点を指摘した。 さらに、報告者は批判期カントの「力」概念をエネルギー概念として再解釈するために、アメリカよりマルティン・シェーンフェルト教授(南フロリダ大学)を神戸大学に招聘して、国際ワークショップ「International workshop on;The variety and unity of modern Germany philosophy from Leibniz, Kant and Schelling With Professor Martin Schönfeld」を開催した。当該の国際ワークショップで報告者は、「The Reinterpretation of Kant’s Attraction:About a criticism against the low of universal gravitation in “Metaphysical Foundations of Natural Science”」と題した原稿を発表し、そこでカントの「引力」概念を「重力の位置エネルギー」として解釈できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、批判期カントの力概念を再解釈するという目的のために、まず犬竹正幸教授(拓殖大学)より京都に招聘して、フォーラム「カント力学および力学法則の射程と意義」を楽友会館にて開催した。そこで報告者は「批判期カントの『作用反作用法則』の再解釈」と題した原稿を発表し、カント力学法則が思想史・科学史に寄与する意義を有するのかどうか、この点を巡って議論した。当該のフォーラムでは、カント力学法則の現代的に意義について犬竹正幸教授と意見交換をすることで、報告者の研究を洗練させることができた。 そして報告者は、アメリカよりマルティン・シェーンフェルト教授(南フロリダ大学)を神戸大学に招聘して、国際ワークショップ「International workshop on;The variety and unity of modern Germany philosophy from Leibniz, Kant and Schelling With Professor Martin Schönfeld」を神戸大学にて開催した。そこで報告者は「The Reinterpretation of Kant’s Attraction:About a criticism against the low of universal gravitation in “Metaphysical Foundations of Natural Science”」と題した原稿を発表した。本稿では、マルティン・シェーンフェルト教授の師にあたる、マイケル・フリードマン教授の解釈を批判的に解釈して議論しており、本稿の議論の検分することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度のフォーラムで報告者が発表した原稿、「批判期カントの『作用反作用法則』の再解釈」を日本哲学会が刊行する『哲学』に投稿することで公にする。そして、昨年度の国際ワークショップで報告者が発表した「The Reinterpretation of Kant’s Attraction:About a criticism against the low of universal gravitation in “Metaphysical Foundations of Natural Science”」を国際的なジャーナルに投稿することで公にする。 また報告者は、カントの「空間」がニュートンの「空間」と概念的に矛盾しないことを論証するためにドイツよりゲルノート・ベーメ教授(ダルムシュタット実践哲学研究所)を招聘する。すでに報告者はゲルノート・ベーメ教授とワークショップないしシンポジウム等の開催日程について調整をしている。当該のワークショップないしシンポジウムで報告者はカントの空間論を精査し、カント空間論内部に「ガリレオの相対性原理」が成立すること、そしてカントの「空間」概念がニュートンの「空間」概念と矛盾しないことを論証する。当該の研究についてゲルノート・ベーメ教授と意見交換を行い、研究成果を“Kant-Studien”に投稿することで公にしたい。 さらに報告者は、カントの「力」を「エネルギー」として再解釈し、カントの「力」がニュートンの「力」と概念的に無矛盾であることを論証する。そのために報告者は、イギリスのカント自然哲学の研究者と意見交換を行いたいと考えており、ワークショップ等を開催する予定である。本研究の研究成果はイギリスのジャーナル、”The British Journal for the Philosophy of Science”に投稿することで公にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、アメリカよりマルティン・シェーンフェルト教授(南フロリダ大学)を神戸大学に招聘するさい、予定していた金額よりも小規模になったことが、次年度使用額が生じた理由である。 そこで、当初は日本人研究者を神戸大学に招聘してワークショップ等を開催する予定であったが、本年度は報告者の研究を国内のみならず国外に発信するために、ドイツの他に、イギリスより研究者を神戸大学に招聘してワークショップ等を開催するために科学研究費助成金の使用を執行する予定である。
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