| 研究課題/領域番号 |
18K12189
|
|---|
| 研究機関 | 開智国際大学 |
|---|
研究代表者 |
土屋 陽介 開智国際大学, 教育学部, 講師 (40806494)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| キーワード | 子どもの哲学 / 哲学対話 / 道徳教育 / 考え、議論する道徳 / 中学校 / 教材開発 / 哲学 / 倫理学 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究の理論的・方法論的背景である「子どもの哲学（Philosophy for Children）」について、その教育理論とそこに含まれている哲学上の問題を分析して、主として哲学研究者に向けて解説した論文を発表した。「子どもの哲学」の教育実践を現代の哲学・倫理学上の論点と結びつけて論じることによって、教育現場の実践とアカデミックな哲学・倫理学研究とを架橋するという、本研究を基礎づける研究成果をもたらした。
小中学校の「道徳科」の授業で哲学的・倫理学的な問いをめぐって「考え、議論する」ための具体的な方法を開発するために、日めくりカレンダー形式の教材を作成して出版した。本研究代表者が、これまでの中学校「道徳科」での哲学対話教育実践の経験の蓄積を活かして、教材に収録する哲学的・倫理学的な問いを選定したほか、「道徳科」の授業で使用可能なワークシートも作成した。哲学・倫理学を専門的に学んだことのない小中学校教員でも哲学・倫理学のエッセンスを取り入れた「道徳科」授業を行うことを可能にした点において、本研究の目的に直接貢献する成果をもたらした。
その他、イギリスの著名な倫理学者・美学者であるベリーズ・ゴートらによる子ども向けの哲学・倫理学教材の翻訳出版を監修することで、哲学・倫理学を取り入れた小中学校の「道徳科」授業を開発するための材料を提供した。また、学級担任を受け持つ中学校教員を対象にして、哲学対話の手法を取り入れた「道徳科」の学習指導案を作成し、哲学対話を取り入れた授業のねらいや、「道徳科」の内容項目との対応、使用教材、学習指導過程（授業の展開案）などを具体的に示すことで、哲学対話を取り入れた中学校「道徳科」授業の具体的な方法論を開発した（当該の研究成果は、2019年5月に刊行される書籍において発表する予定である）。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度にあたる当該年度では、当初の計画以上に、中学校の「道徳科」の授業での使用を念頭に置いた哲学・倫理学教材の開発を具体的に進めることができ、その成果を複数発表（刊行）することができた。これらの研究成果によって、哲学・倫理学を専門的に学んだことのない一般の中学校教員でも哲学・倫理学のエッセンスを取り入れた「考え、議論する道徳」の授業を行うことが可能になった。この点において、当該年度は、本研究の研究目的の達成に向けて大きく研究を進めることができたと考えている。
他方で、中学校「道徳科」の教科書教材に基づいた学習指導案・年間指導計画・評価方法の体系的な草案（カリキュラム草案）の作成は、当初の計画より遅れてしまった。研究代表者の多忙により、当初の予定よりも出張を行う機会が限られたため、国内外の学校現場を見学して既存の授業方法を収集・検証するフィールドワーク調査も十分に行うことができなかった。「道徳科カリキュラム検討会」の開催準備も遅れ気味である。こうした点においては、当該年度は、計画通りに研究を進めることはできなかったと考えている。
|
| 今後の研究の推進方策 |
2019年度7月に、コロンビアのボゴタで開催される「子どもの哲学」の国際会議ICPIC（International Council of Philosophy Inquiry with Children）の第19回大会に参加を予定している。これによって、哲学対話を活用した道徳教育の海外の最新の実践事例を収集・検証し、現在遅れている海外における授業方法の収集・検証を重点的に進めていく予定である。また、「道徳科カリキュラム検討会」の開催を早急に準備する。当初の研究計画では、研究代表者が作成したカリキュラム草案を「道徳科カリキュラム検討会」において批判的に検討することによってカリキュラムの完成版を作成する予定であったが、「道徳科カリキュラム検討会」のメンバーにもカリキュラム草案を作成・提案してもらう体制を整え、より多角的な視点から質の高いカリキュラムを作成できるように研究計画を部分的に変更することも検討している。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記載したように、国内外の学校現場を見学するフィールドワーク調査が当該年度に当初の計画通りに進まなかったことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。次年度以降にフィールドワーク調査を精力的に進めることで、当初の研究計画通りに研究費を支出できるようにすることを計画している。
|
