研究課題/領域番号 |
18K12189
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研究機関 | 開智国際大学 |
研究代表者 |
土屋 陽介 開智国際大学, 教育学部, 准教授 (40806494)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの哲学 / 哲学対話 / 道徳教育 / 考え、議論する道徳 / 中学校 / 教材開発 / 哲学 / 倫理学 |
研究実績の概要 |
本研究では、昨年度より、研究代表者に現役の中学校および高等学校の教員8名を加えたプロジェクトチーム(研究計画調書上の「道徳科カリキュラム検討会」に相当)を発足させ、哲学対話とアクティブラーニングの教育手法をふんだんに活用した中学校「道徳科」の教材集の作成に取り組んできた。今年度は、昨年度からのプロジェクトチームの取り組みを継続させ、上記の教材集を完成直前の段階まで仕上げることができた。 具体的には、中学校「道徳科」の枠組みの中で哲学対話教育に深く携わった経験のある数名の教員がプロジェクトの中核を担い、オンラインでのミーティングを繰り返しながら授業プランを作成した。「ねらい」「学習指導過程」「指導上の留意点」「ワークシート」から構成される一時間完結型の授業プランを50種類作成し、その中で中学校学習指導要領で定められている道徳科の学習内容(22個の内容項目)の全てが扱われるようにした。また、各教科書会社が作成した検定教科書を使用することのできる授業プランも12種類作成し、さらに、学期末・学年末の評価に使用することのできる授業プランも6種類作成した。 以上の教材集を、当初の研究計画に従って、学校教員向けの一般書籍として刊行できるように教育系の出版社と交渉を行い、出版の手はずを整えた。その結果、今年度末の時点において、書籍として刊行する直前の段階まで完成させることができた。(同教材集はその後、2021年4月23日付で『中学道徳ラクイチ授業プラン』として刊行された。) 加えて、東京私立学校保健研究会にて、私立中学校・高等学校の養護教員を対象にして、哲学対話教育の概要とそのカウンセリングへの応用に関する講演を行い、その内容を同会会誌上で公開した。このことを通して、哲学対話とカウンセリングマインドとの結びつきを解明し、哲学・倫理学の学校教育に対する貢献可能性をさらに広げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」欄に記載したとおり、今年度は、哲学対話とアクティブラーニングの教育手法を活用した特色のある中学校「道徳科」の教材集を、商業出版として刊行直前の段階まで仕上げることができた。複数の現役学校教員に研究協力を仰いだことで、哲学・倫理学の要素を色濃く取り入れつつも、中学校の授業の中で実際に使用することが十分に可能な、極めて実践的な内容の教材を開発することができた。以上の教材集は、「哲学・倫理学を取り入れた中学校の『道徳科』授業の開発」という本研究の研究目標達成に直接関わる中核的な成果物である。それを完成直前の段階まで仕上げることができた点においては、当該年度における本研究の進捗状況は順調に(ある意味では、当初の計画以上に)進展していると判断できる。 一方で、研究計画調書上で予定していた「国内外で先駆的に取り組まれている哲学対話を取り入れた道徳教育実践を対象としたフィールドワーク調査」については、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受けて、まったく行うことができなかった。教材集の作成については研究計画通り完成直前の段階まで仕上げることができたものの、今後完成した教材を使用した中学校教員からフィードバックを受けて、それをよりよいものへと改良・改善していくためには、国内外の先駆的な実践事例を収集することは本研究にとって依然として必要である。この点においては、当該年度における本研究の進捗状況には大きな遅れがある。 以上の二点から総合的に判断して、当該年度における本研究の進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」欄に記載したとおり、哲学対話を取り入れた国内外の先駆的な道徳教育実践事例を収集するためのフィールドワーク調査の実施が大幅に遅れている。このため、今後は国内外の学校や教育機関へのフィールドワーク調査、および、オンライン形式での関係者への聞き取り調査を中心に研究を推進する。具体的には、研究計画調書上で当初より予定していたオーストラリアやアメリカの小学校・中学校の訪問調査等を行うことを計画している。ただし、本報告書を作成している2021年5月の時点においても、新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大は収束していないため、今後の状況次第では研究期間の延長申請を行うことも検討している。 また、次年度の年度当初に刊行される教材集に関しては、教材を実際に使用した中学校教員からのフィードバックを収集し、国内外で行われている他の実践事例を参照しながら、教材のさらなる改良・改善に取り組むことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記載したとおり、新型コロナウイルスの国内外での感染拡大の影響を受けて、当初より計画していた国内外の学校や教育機関を対象にしたフィールドワーク調査をまったく行うことができなかったことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。今後の状況次第ではあるが、次年度以降は遅れているフィールドワーク調査を可能な限り精力的に進める予定であるため、当初の研究計画通りに研究費を支出できる予定である。
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