本研究は、「まともな理由なく危害を加えるべきではない」という常識的な考えを基礎に、人間による動物の扱いの倫理的是非を捉え直すものである。菜食主義への関心は、環境問題への関心もあいまって、高まりつつあると思われる。そうした私たちの食選択や、畜産や食肉産業を支える消費選択を振り返るさいに、日常的な思考のなかで用いることのできる原則として、「危害」を避けることへの配慮を本研究は提示している。また、生命を生み出すという選択をめぐる本研究の議論は、現実の問題をめぐる、生殖に関する生命倫理学の基礎として、参照することが可能である。
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