本研究の成果は、主に以下の3点に集約される。1)『批判』演繹論の書き換え問題とその目的:カントが第1版でもくろんでいた、人間の認識諸能力内部におけるメカニズムの解明が第2版においても保存されており、その意味で第2版演繹論の目標は心理主義的議論の補強にあったのだということを示すことができた。2)テーテンスによる認識能力論の整理:テーテンスの認識能力体系の中で「想像力」「創作力」という能力が重要な位置を占めることが明らかになった。3)上記2)で着目したテーテンスの想像力、創作力という両能力の内実および両者の関係が、第1版演繹論でカントが示した「三重の総合」という着想に影響を与えていることを示した。
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