研究課題
本研究は、終末期医療における「孝」の表現に注目し、延命治療をめぐる意思決定と家族の葛藤を分析することで、患者の「最善な利益」や「自律の尊重」など従来の倫理原則とは異なる、「孝」の観点から捉える終末期医療のあり方と家族との関係性に基づいた倫理原則の提示を目的としたものである。日本と台湾における「孝」の概念と医療決定に際する「孝」の役割を考察し、終末期医療方針における「孝」の文化の影響を検討してきた。最終年度である2022年度は、台湾の終末期医療の法制化と安楽死の合法化推進運動の背景を検討するとともに、コロナ禍による医療現場の課題、とりわけ集中治療室、人工呼吸器など希少な医療資源の配分に関する倫理的問題と現場の対応を考察した。2022年度に2回の現地調査を行い、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による事前指示書が不適切に使用されている懸念が生じていた。また、台湾人の受診習慣や健康保険制度の普及により、一部の大病院に患者が集中し、医療体制がひっ迫するような状況も生じた。コロナ禍により、医療提供体制に潜んでいる従来の課題がより顕著となり、感染拡大になった際に、現場の医療従事者に多大な負担を与えたことを明らかにした。2022年度では、コロナ禍において医療現場での葛藤を考察し、「孝」を行うことと感染対策との両立の困難、集中治療のトリアージ制度の発展と課題を検討し、2020年春頃から2022年まで台湾で行われた感染対策と医療資源の配分の状況を整理・分析して、それぞれ論文にまとめた。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
大谷大学真宗総合研究所研究紀要 = ANNUAL MEMOIRS OF THE OTANI UNIVERSITY SHIN BUDDHIST COMPREHENSIVE RESEARCH INSTITUTE
巻: 40 ページ: 45~59
10.15070/00011369