研究課題/領域番号 |
18K12202
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
庄司 史生 立正大学, 仏教学部, 専任講師 (00632613)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 後期インド仏教 / 般若経 / 三母広注 / ダンシュトラセーナ / 世尊母伝承随順 / ジャガッダラニヴァーシン / 正法 / 仏説論 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、平成30年度に引き続き、本研究の基礎文献となる『三母広注』とその影響を受けて編纂されたとされる『世尊母伝承随順』の翻訳作業と校訂テキスト作成を進めた。平成30年度の時点で『三母広注』全27巻のうち、第1巻と第20巻、第27巻を今回の研究の主たる範囲とする方針を固めた。令和元年度は『三母広注』第20巻における「正法」解釈の背景を解明するために、同論が注釈対象とする『十万頌般若』『二万五千頌般若』『一万八千頌般若』該当箇所のテキスト校訂(主にサンスクリット語とチベット語訳を対象として)と和訳を行い、論文として公表した。今後は、後期インド仏教の作品である『三母広注』と『世尊母伝承随順』が示す「正法」解釈の特徴を明らかにする予定である。 この問題を明らかにすることを、より一般化してとらえ直すならば、それは「ある伝統が失われないようにするために当事者たちがどのような解釈を重ねてきたか」と理解することができると考えられる。そして、この問題はさらには「仏説論」へと連なるものとも考えられる。令和2年度には、上記二つの作品が「仏説論」という点についてどのような理解を示しているのか、という問題にも取り組む予定である。 なお、令和元年度は『三母広注』第18巻と『世尊母伝承随順』の第2章に「須菩提品」に関する言及があることを確認した。この問題は『般若経』の成立論と関わるものであり、当初予定はしていなかったものの、該当箇所の解読研究を行い、その成果を論文にて公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の時点で、令和元年度に取り組む予定であった問題に取り組み、その一部を公表することができた。未公表分については令和2年度に公表することとしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は引き続き『三母広注』と『世尊母伝承随順』の必要箇所の翻訳作業と校訂テキスト作成を進める。 令和元年度は、平成30年度の時点でいずれ取り組むべき課題としてあげていた『二万五千頌般若』の付番作業は行わず、上記二つの文献の解読作業を主として進めた。しかしながら、それらの解読作業を進める中で、『二万五千頌般若』に対する付番作業完結の必要性が感じられた。令和2年度にはその付番作業にも取り組むことにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:主な理由として、当初は作成データ校正のための人件費の使用を予定していたが、実際には必要がなかったため使用しなかったこと、また物品(書籍)の購入を見送ったことがあげられる。 使用計画:上記2点については、次年度に支出する予定である。
|