研究課題/領域番号 |
18K12205
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
GAITANIDIS IOA 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 助教 (90715856)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 判例 / 裁判 / 占い / 霊能 / スピリチュアル / 誠実さ / クレーム / 宗教 |
研究実績の概要 |
令和元年度の報告書で示した本科研プロジェクトのもう一つのルート(=「消費詐欺」と思われた行為に対しての被害者のクレームや裁判の判例における論述を「脱スピ」論の一環として分析すること)を追跡することにした。具体的には、日本の判例データベース(LEX/DB)に収録されている判例を「霊能」、「占い」、「スピリチュアル」という3つのワード検索で表示される約300件をリサーチアシスタントの協力を得ながら、記録し、その特質を分析した。その成果を国際基督教大学キリスト教と文化研究所公開講演会などの場にてすでに発表した。 簡略にまとめると、 ①「占い」・「霊能」が関わっているが、その「宗教性」は事件内容と直接関係ない事件が大半(180件程度)であることから、日常の中で占い師に頼っている人がどれほど多くいるかわかった。その論理の延長線で、占いや霊能と関わるビジネスは、むしろ通常のビジネスとなっているからこそ、その「宗教性」と関係ない著作権問題、セクハラ・パワハラなどがみられるといえる。 ②一方、英語圏の同様の事件と同じく、占い師などが関わる事件が起きるのはそのサービス提供者の「誠実さ」が疑われたときだと、この研究で再度確認できた。しかし、「誠実さ」というのは宗教だけではなく、市場一般にも大切だとされているものであり、多国籍テクノロジー企業などのような大企業でも、「誠実さ」がブランド認識にいれられる程に、社会的通念となっている。つまり、スピリチュアリティから意図的に離れ、その「市場化」を批判している人々は誠実さを追求するように求められている現代社会の動向を反映しているともいえる結論にいたった。 その他に、学術誌Japanese Religionsの「日本の宗教とグローバル・オカルト」というテーマの特集を共著・共編し、現代のスピリチュアリティの歴史を含め、日本における「オカルト」をグローバルの観点から論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、インタビューの実施が不可能となり、または、大学の授業の急なオンライン化で令和2年度の前半に予想通りの研究時間を確保できなかったからである。しかし、前年度にすでに示してあったもう一つの研究のルートに沿って、令和2年度の後半に研究の成果を出せた。また、研究発表を3つ行い、Japanese Religionsという雑誌の特集号(44号)を共編・共著した。そして、「脱スピ」の研究成果を含め、今まで積み重ねてきた日本におけるスピリチュアリティ研究をまとめる単著の執筆の機会をBloomsburyという出版社から令和2年度末にいただいた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の今後の展開によって不明なところは多いが、数名でも脱スピ論者のインタビューを行いたいと思っており、その知見を含めた成果を学会発表3回(うち2回はすでに申請が完了しているヨーロッパ宗教学会の2021年大会とヨーロッパ日本研究協会の第16大会)と論文2つにてまとめる予定である。また、脱スピの研究を含めた英語での単著の原稿の完成も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、旅費などが予定通り発生しなかった。令和3年度はこのプロジェクトの成果を含めた英語での原稿の校閲のために謝金を使用する予定であり、また、国際学会の対面参加が必要でしたら、予定通りの旅費が発生する予定である。
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