研究課題/領域番号 |
18K12207
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
小布施 祈恵子 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (90719270)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上座仏教 / タイ / 布教 / 布教ネットワーク / 改宗 / 東南アジア / ミャンマー / シャン州 |
研究実績の概要 |
2020年度はタイ仏教の海外派遣僧プログラムの活動方針とその特徴を、プログラム修了者の英国での活動の調査を通して解明する予定であったが、COVID-19パンデミックの影響により現地調査を行うことができなかったため、英国におけるマハーニカイ派僧侶の最近の活動の動向を分析する作業を行った。 この結果以下の点が判明した。まず英国におけるマハーニカイ派の寺院および僧侶の統括組織であるThe Council of Thai Buddhist Monks of the United Kingdom and Irelandは、近年他国の布教拠点との連携を深め、共同で布教方針を発表したりしている。こうした「布教ネットワーク」の確立・補強は海外布教の拡大を目指す動きとして注目される。 一方英国内における在家実践者の寺院との関わりについては、先行研究で指摘されてきた積徳行為のために寺院に出入りする移民コミュニティと、主に瞑想の実践に関心を持つ英国人の改宗者・実践者という差異は確かに見られるものの、移民コミュニティにはタイだけでなくミャンマーなどの東南アジアの近隣国出身者が混じっており、これらのグループの「棲み分け」のダイナミズムは複雑である。さらにミャンマー人の在家実践者のいる「タイ」寺院では、ミャンマーのシャン州出身の僧侶が指導の中心となっている事例があり、これらの僧侶はタイ人とミャンマー人両方の在家者のニーズに対応している。タイ本国の海外派遣僧プログラムの運営にもシャン州出身の僧侶が関わっており、タイ仏教の海外布教活動におけるシャン州出身者の役割は小さくない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題は、2020年度に英国における現地調査を行う予定であったが、COVID-19パンデミックの影響で予定していた調査を行うことができなかったため、研究の進捗に遅れが生じている。このため補助時事業期間延長に申請し、承認を得た。またパンデミックの収束については引き続き予想がつかないため、現地調査中心であった最終年度の研究内容を、関連文献の検討を通した分析に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたように、補助期間延長後の最終年度となる2021年度は予定していた現地調査中心の計画を変更し、仏教の海外布教一般に関する先行研究をより広く検討したうえで、本研究課題の調査対象であるタイ仏教の海外布教僧プログラムを仏教の海外布教の歴史における一つの事例として位置づけ、その特徴を社会・政治的文脈にてらして分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 パンデミックの影響により、最終年度に予定していた英国における現地調査を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。このため補助事業期間の延長申請を行い、承認された。ただパンデミックの収束については予想が立たないため、2021年度の研究は、現地調査ではなく、関連文献の検討に基づく分析作業を中心とする。
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