研究課題/領域番号 |
18K12210
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
石黒 安里 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (40802583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 改革派ユダヤ教 / アメリカ・ユダヤ人 / シオニズム / カウフマン・コーラー / スティーブン・S・ワイズ / ユダヤ人女性 / アメリカ化 / 革新主義期 |
研究実績の概要 |
本研究は米国におけるユダヤ教のシオニズム思想に対する批判的精神と親和性について考察するものである。一年目にあたる本年度は以下の2点に絞り研究を進めた。 1)アメリカの改革派ユダヤ教のシオニズムに対する批判精神とシオニズムの受容について考察するために、米国におけるユダヤ教改革派の古典的世代の代表者の一人であるカウフマン・コーラーに着目し、彼のシオニズム観の曖昧性について、当時、改革派ユダヤ教内でも見解が分かれていた女性指導者を巡るコーラーの見解を引き合いに出しつつ考察した。2)改革派ユダヤ教内部で親シオニズム的傾向が現れる1920年代について、コーラーの次世代にあたる、スティーブン・S・ワイズの活動を追いながら、1920年代の特殊性について検討した。 それらの成果の一部として、今年度は報告書を含む2本の論文と米国で開催されたAssociation for Israel Studies(AIS)、ヘブライ大学と同志社大学の共催により、イスラエルで開催された国際ワークショップを含む、国内外の学会で報告を行った。 特にAISの学会では、改革派のラビの一人であり、且つイスラエル建国以前のパレスチナでアラブ人との共生を目指したユダ・L・マグネスの研究者と交流を持つことができた点が、今後の研究において大きな意味をもつに至った。また、2018年はイスラエル国家建国70年を迎えた年であり、AIS学会への参加は、それに纏わるシンポジウムにおいて、現代におけるシオニズムに対する批判と受容を交えた議論を聞くことができた点も意義のあるものとなった。 2019年2,3月にAmerican Jewish Archives(シンシナティ)で、コーラーとワイズに関する書簡を中心とした一次資料を調査するとともに、Prof. Gary P. Zola教授に改革派ユダヤ教に関して指導を仰いだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸般の事情により止むを得ず、執筆中の論文(1本)を年度内に投稿することを見送ることとなった。しかし、とりわけ以下の3点に関しては当初の計画にはないものであったが、いずれも今後の研究において意義のある機会となった。そのため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
1)国際シンポジウム(The Third Symposium on Jewish Studies, A collaboration between CISMOR, the Faculty of Theology, Doshisha University and The Faculty of Humanities, The Hebrew University of Jerusalem)で報告を行い、ユダヤ学の異なる専門家との交流の機会があった。その後、コーラーに関して資料をやり取りするなど、助言を頂ける関係を築けた。 2)2019年2,3月のAmerican Jewish Archivesでの資料調査に訪れた際、アーカイヴィストらによって、スティーブン・S・ワイズの説教が掘り起し中である機会に恵まれ、その一部を拝聴できたこと。これについては今後も引き続き調査を行うことで、ワイズのシオニズム観の一側面と、彼の説教を聞いていた聴衆の雰囲気が明らかになり、当時、どのようにシオニズムが一部のシナゴーグで語られていたのかを知る手がかりになると思われる。 3)外務省の事業である「第2回カケハシ・プロジェクト:ユダヤ若手研究者北米派遣」に参加し、The Association of Reform Zionists of America (ARZA)の会長でもある、Rabbi John L. Rosove氏と面会した。改革派ユダヤ教のごく一部に存在している親シオニズムの流れの今日的な展開に触れることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にはなかったが、S・S・ワイズのシオニズム観を分析する上でも、引き続き彼の説教に関して調査する必要がある。また、コーラーのシオニズム観に関しては、資料読解を進めるうえで、彼のメシアニズム理解が重要な鍵となることが明らかとなったため、これらのことを精査し、それぞれ論文の完成を目指す。 なお、研究遂行の結果生じた多少の方向性の転換に関しては、引き続き国内外の専門家に指導を仰ぎながら適宜調整を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国での研究調査(2019年2-3月)の際に、予期せぬ体調不良(二度のインフルエンザ)になり、当初の予定から用務内容の変更が生じたことにより、次年度への繰越金が発生した。 繰越金額72,800円は、論文の英文要旨および発表原稿の英文校正費として、次年度の「人件費・謝金」に加えて使用する。残金が発生した場合は、研究調査費に補てんする。
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