研究課題/領域番号 |
18K12210
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
石黒 安里 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (40802583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 改革派ユダヤ教 / アメリカ・ユダヤ人 / シオニズム / スティーブン・S・ワイズ / シオン / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀後半から1940年代までの米国におけるユダヤ思想家が形成したシオニズム観の変遷とユダヤ教解釈の展開を考察するものである。二年目にあたる2019年度は昨年度に引き続き、スティーヴン・S・ワイズ(Stephen S. Wise, 1874-1949)に関して収集した史料の熟読を進める傍ら、「コロンバス綱領」(1937年)を中心に改革派ユダヤ教内部のシオニズム観の多層性について焦点を当てた。 海外の国際学会で1本の報告、国内においては、招待講演1本を含む、4本の報告を行った。また、2018年度に参加した外務省の対日理解促進プログラム、北米派遣事業「カケハシ・プロジェクト」第二回「ユダヤ研究者派遣」のアウトリーチ活動の一環として、5月に2度報告した。 自身の研究テーマの紹介と2018年度のカケハシ・プロジェクトの報告を兼ねた研究ノートを執筆した。改革派ユダヤ教の歴史と現在に至るまでの変遷過程を示した研究ノートの英語訳に関しては、改革派ユダヤ教の歴史を専門とするMichael A. Meyer名誉教授から数々の示唆を頂いた。 昨年度に引き続き、2019年8月(約二週間)と2020年2月(約一カ月)にシンシナティとニューヨークで資料収集を行った。2月の調査ではCCAR(Central Conference of American Rabbis)の議事録、刊行物を収集した。米国での研究調査期間中はユダヤ史関係の複数の専門家からご指導を賜る機会があった。特に2月の研究調査時に、初期のアメリカ・シオニズム史を専門とするMark A. Raider教授から知見提供を受けることができたことは今後の研究を進めるうえで重要な機会となった。 また今年度は、平岡光太郎氏(同志社大学)とともに同志社大学一神教学際研究センター主催の研究会を立ち上げ、ワークショップを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)2020年2月の時点で、American Jewish Archives(AJA)において、改革派ユダヤ教の転換点の一つとされる「コロンバス綱領」に関するCCAR(Central Conference of American Rabbis)の議事録、刊行物の収集が完了した。改革派ユダヤ教とシオニズムに関連した二次資料では十分に記述されていなかった「コロンバス綱領」刊行前後の議論の様子について知ることができた。 2)AJAでのS・S・ワイズのファイルについてはすべて閲覧が完了した。現在、収集した資料の精読を進めている。S・S・ワイズのユダヤ教観とシオニズムとの関係性について、調査の進捗状況としては、アメリカのユダヤ教改革派のなかでのS・S・ワイズに関する位置づけとシオニズムとの関係に関する資料は決して多くはないことが判明した。 3)2019年12月に「ユダヤ教における『社会的正義』の再解釈:アメリカ・シオニズム・モラリティの文脈から」と題した報告を行った。本研究と直接かかわりのあるテーマではないが、ユダヤ教における「社会的正義」とシオニズムとの関係性については、広義において、S・S・ワイズのユダヤ教理解とシオニズムの関係を考えるうえでヒントになった。 4)6月のイスラエルでの国際大会および2019年度の米国での研究調査時に複数の専門家と知的交流を深めることができた。 以上の4点を踏まえて「おおむね順調に進展している」と判断した。ただし、史料調査の進捗状況により、現在、同時進行形で複数のテーマを進めている。そのため論文執筆は遅れている。次年度はこの点を改善する余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこれまで収集した史料の精読を進め、特に以下の二点に留意しながら、それぞれ論文の完成を目指す。 1)S・S・ワイズのユダヤ教観とシオニズムとの関係に関して、1920~1940年代の時代背景を踏まえつつ分析する。 2)1940年代の改革派ユダヤ教内部のシオニズムに関する多義的な理解について、歴史的背景も視野に入れて纏める。
2020年度も米国での調査を予定しているが、コロナ禍の影響によっては、研究調査を見送る可能性がある。代替措置として、メールで専門家から知見提供を受けることで対応したい。
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