研究課題/領域番号 |
18K12210
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
石黒 安里 北九州市立大学, 外国語学部, 研究員 (40802583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 改革派ユダヤ教 / アメリカ・ユダヤ人 / シオニズム / スティーブン・S・ワイズ / CCAR / 文化的シオニズム / ユダヤ人女性 / シオン |
研究実績の概要 |
2020年度は米国での一次史料の調査が困難であったため、これまでに収集した史料の精読を進め、主として2つの研究を進めた。 1)1940年代前半のアメリカの改革派ラビらの「シオニズム」に対する多様な見解について、第76回北九州アメリカ史研究会で報告した(2020年9月)。具体的には、“Are Zionism and Reform Judaism Incompatible?,”(Papers Read at Convention of the Central Conference of American Rabbis, June 24, 1943.)を用いて、シオニズムに対する肯定派と否定派の陣営について、4名のラビの見解を取り上げた。 2)S・S・ワイズのシオニズム観について、1930~40年代に焦点を当てて分析した。2018年度に実施した、1920年代のS・S・ワイズのシオニズム観と比較すると、とくに40年代にかけては、ユダヤ人救済のための具体的な発言が散見される一方で、シオニズムの理念的なことに関する発言は1920年代と比較するとほとんど見られない。1940年代のS・S・ワイズに関する研究の蓄積が多い一方で、1920年代のものは少ないため、1920年代を中心に論文をまとめようと試みたが、完成させるにはさらに資料収集の必要性が生じた。 さらに本年度は現代アメリカにおけるユダヤ教の規範の拡張を検討した論文「現代アメリカにおけるユダヤ教の境界線―女性ラビをめぐって―」が、『宗教と風紀<聖なる規範>から読み解く現代』(高尾賢一郎・後藤絵美・小柳敦史編、岩波書店、2021年)に収録された。また同志社大学一神教学際研究センターのCISMORリサーチフェロー研究会の枠組みで、2つの研究会を企画した。1)「『シオン/エルサレム/聖地』観の再検討」(共同企画)、2)「アメリカと宗教」(単独企画)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の感染拡大により、米国への渡航が叶わず、論文完成に必要な一次史料の収集ができなかった。(S・S・ワイズのシオニズム観に関する一次史料は2019年度にほぼ完了し、その後、精読を進めた。しかし、今年度は上記のテーマを含む2本の論文の執筆を並行して進めていたが、その過程で、閲覧するべき一次史料および日本国内には所蔵がない二次文献が新たに生じた。そのため、いずれの論文も完成には至らなかった。) 2021年5月中旬の時点でも、本研究課題の主な調査機関であるAmerican Jewish Archives(於:シンシナティ)は閉館している。また、当該研究テーマの文書はまだデジタル化が進んでいないため、当初の計画の遂行は困難な状況にある。また、予定していた海外の学会の年次大会が中止となった。 知見提供の授受に関してはオンライン上で問題なく実施できたものの、総合的に当初の計画から遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も米国への渡航、American Jewish Archivesでの資料調査の実施が困難な場合は準備中の論文の内容を一部変更せざるを得ず、上記アーカイヴでの資料収集に頼らない方法を検討する。具体的には、これまでに得られた成果をまとめるとともに、基礎的な情報の部分だけでも公表できるように工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は2020年度が最終年度の予定であったが、COVID-19の感染拡大に伴い、米国での資料調査の実施ができなかったこと、予定していた国際学会の中止などの事由により、研究計画を大幅に変更せざるを得なかった。
そのため、計画を一年延長し、助成金の繰越申請をおこなった。繰越申請の段階では本研究調査に不可欠な一次史料の収集、専門家へのインタビューのための旅費として計上している。しかし、2021年5月の段階でいまだ海外への渡航の見通しがつかない状況であるため、助成金の一部は二次文献などの物品の購入、英文校正費に充当する予定である。
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