研究課題/領域番号 |
18K12210
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
石黒 安里 北九州市立大学, 外国語学部, 研究員 (40802583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 改革派ユダヤ教 / アメリカ・ユダヤ人 / アイデンティティ / 文化的シオニズム / ユダヤ人女性 / 祈祷書 / イスラエル / 政党支持 |
研究実績の概要 |
2021年度もCOVID-19の感染拡大(とりわけ12月のオミクロン株の流行)により、一次史料収集のための渡米が叶わなかった。そのため当初の研究計画を大幅に変更した。当該研究課題は主にアメリカの改革派ユダヤ教に焦点をあてて、シオニズムの批判と受容の形成過程について歴史的に分析するものであるが、本年度はその研究対象を現在のアメリカのユダヤ人社会にまで拡げ調査を進めた。 現在、アメリカのユダヤ教においては政党支持が大きく二つに分かれており、主に正統派が共和党を支持する割合が高い一方、その他のユダヤ教のグループ(特に改革派)は民主党支持の傾向があること、またイスラエル国家に対する見方について、アメリカのユダヤ教の多様な展開を示しつつ、ピュー・リサーチ・センターの最新の調査結果をもとにした短い論考を纏めた。同内容は同志社大学一神教学際研究センターの機関誌『一神教学際研究』(JISMOR)の第17号の特集「アメリカと宗教」に所収された。 また1940年代のアメリカ・ユダヤ教界のシオニズム解釈について、過去に二度、学会および研究会でそれぞれ報告を行なったが、その時に得た指摘をもとにした報告を2022年6月に開催される第38回Association for Israel Studiesの年次大会で報告する予定であり(受理済み)、2021年度はその準備にあてた。 その他、本研究課題と日本学術振興会特別研究員PDとして採択されている課題と合わせた成果として、アメリカにおける祈祷書の改訂の歴史的変遷に着目し、その改訂内容からアメリカの改革派ユダヤ教徒らのシオニズム観について検討した。 また2021年度は、2021年1月に刊行された『宗教と風紀』(岩波書店)に所収された拙論について2度報告する機会があった。そこで得た指摘から現代アメリカのユダヤ教の変容に関する分析についての新たな課題を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で必要不可欠である海外での調査を実施することができなかったものの、研究計画を変更することで、1)結果的に1920年代から今日に至るまでのユダヤ人のシオニズムに関する解釈の変遷を大局的に見る視点を得ることができたこと、2)当該研究課題に関連する二次文献を渉猟する時間に充てることができたこと、上記2点により、当初の研究計画ではなかったものの、研究自体は一定の進展があったと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画を変更したうえで一定の進展があった一方で、本研究課題において重要人物の一人であるスティーブン・S・ワイズに関する最終的な資料調査が完了しておらず、次年度に資料調査を完了し、論文の完成を目指したい。仮に米国での調査が難しかった場合、 Shirley Idelsonによる、S・S・ワイズのユダヤ教の解釈に関する文献が2022年8月にUniversity Alabama Pressより刊行予定であるため、当該文献を刊行後、精読することで、ワイズのユダヤ教の解釈とシオニズムの関係性に関する新たな知見を得ることができるものと期待される。 その他、引き続き2021年度より着手した現在のアメリカのユダヤ人のシオニズム解釈についても調査を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた米国での一次史料調査を実施することができず、「コロナによる事故延長」の手続き(2回目)を申請したため、次年度使用額が生じた。次年度における使用計画は主に資料調査費に充てる予定である。ただし、調査の実施が難しい場合は、当該研究分野の文献を購入する費用に充てる。
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