文献学的読解に基づいた成果を、宗教学や関連学的領域の学知と接合させる本研究は、従来研究が手薄であった記述的な仏教儀礼研究の進展に寄与しうる。禅宗清規に記される周期的儀礼が宗教共同体の組織的結束と維持に重要であること、この他、視篆儀礼については中国および日本の清規関連文献を用いて、禅儀礼の変容が存在することを確認できた。 近年、コロナ禍における共飲食の実施が問題となったが、これは個人の心がけの問題と言うよりは、深く根付いた文化的慣習の問題である可能性もある。本研究で取り上げた周期的儀礼には共飲食が伴うケースが多かった点から、こうした問題の文化的背景について考察する契機となった。
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