研究課題/領域番号 |
18K12217
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
小柳 敦史 北海学園大学, 人文学部, 准教授 (60635308)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自由主義神学 / 文化プロテスタンティズム / ヴァイマール共和国 / デモクラシー |
研究実績の概要 |
2019年度は、前年度の「今後の研究の推進方策」ではM・ラーデのテキスト分析とA・v・ハルナックのテキスト分析を行う予定になっていたが、集中的なテキストの分析はM・ラーデのみにとどまり、ハルナックのテキスト分析には着手できなかった。その代わり、ラーデのテキストを分析する作業に伴い、ラーデが編集していた雑誌『キリスト教世界』に掲載された他の神学者たちの論説にも目を通すことになった。そこから明らかになったことは、第一次世界大戦の敗戦後にヴァイマール共和国を支持することになるリベラルな神学者たちの多くは、ヴィルヘルム期にはルター派教会の民主化を主張していたことである。ただし、「共和主義/共和政」についての関心はヴィルヘルム期からヴァイマール期を通して希薄であり、ヴァイマール共和国は民主主義国家として理解されている。この2点、すなわち、1)教会の民主化の延長線上に国家の民主化の議論があること、2)共和国が民主主義の実現形態として素朴に想定されていることが、ヴァイマール期におけるリベラルな神学者たちの議論の限界となっているのではないか、という見通しを得た。 以上のテキスト分析と並行して、ヴィルヘルム期からヴァイマール期の思想史を記述する方法論の検討として、ベルリン大学の社会学者・神学者であるH・ヨアスの著作の検討を行った。日本ではまだ本格的に紹介されていないが、ヨアスは「肯定的系譜学(affirmative Genealogie)」という観点から、西洋的な「人格」や「人権」の概念について捉え直す議論を行っており、本研究にとっても参考になるものであると思われる。 年度末に予定していたドイツでの情報収集と文献調査は、コロナウイルスの流行により中止とした。ただし、2019年10月にミュンヘン大学名誉教授のF・W・グラーフ博士が来日した際に、本研究についても議論する時間を持つことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は急遽、本研究課題以外の研究活動に時間と労力を用いることになったため、本研究に割ける時間が少なくなってしまった。そのため、上述したように、当初計画していたハルナックのテキスト分析に着手することができなかった。しかし、ヨアスの著作から、方法論的な手がかりを得るという計画外の収穫もあったため、総合的には【やや遅れている】と評価することが妥当だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、ハルナックのテキスト分析を進めながら、ヨアスの方法論についても検討を深める。可能であればベルリン大学にヨアスを訪ねたいが、ドイツに渡航できるかどうかはコロナウイルスの流行状況によって判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツでの情報収集と文献調査を予定していたが、コロナウイルスの流行拡大により中止したため、海外旅費として使用予定だった金額が次年度使用額となった。2020年度中にドイツに渡航できる状況となった場合には、海外旅費として使用する。コロナウイルスの流行が収まらず、2020年度も海外渡航が不可能な場合には、さらにもう一年繰り越すこともあり得る。
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