研究課題/領域番号 |
18K12217
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
小柳 敦史 北海学園大学, 人文学部, 准教授 (60635308)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自由主義神学 / 文化プロテスタンティズム / リベラリズム / デモクラシー / ヴァイマール共和国 |
研究実績の概要 |
2020年度は、第一次世界大戦中・後の時期に書かれたA・v・ハルナックおよびO・バウムガルテンの文献の分析にあたった。ただし、入手できた資料と研究時間の不足により、網羅的な分析とはなっていない。しかしながら、本研究の問題設定である「理性の共和主義者」という枠組みの再検討に向けては一定の見通しが得られた。それは、これまでの年度に検討したトレルチやラーデも含めて、ヴァイマール共和国を支持したリベラルな神学者たちを「理性の共和主義者」と呼ぶことは可能であるが、固有の立場を表す概念としてはあまり意味をなさないというものである。なぜなら、「理性の共和主義者」はマイネッケによって「心情の君主主義者」に対置されたものであるが、こうした神学者たちにおいて「理性」は「心情」と相反するものとは理解されておらず、そしてまた、彼らにとっては民主的な国家運営(および教会運営)が重要であって、マイネッケほどには民主制と立憲君主制が鋭く対置されていないように見受けられるからである。この点をさらに詳細に考察するには、共産主義革命への警戒心や、議会制民主主義を補完する役割を与えられる大統領制についての彼らの見解を分析する必要があり、これは今後の課題となる。 昨年度より着手した、新たな視座を獲得するための方法論の候補であるH・ヨアスの著作の検討も継続している。ヨアスの「肯定的系譜学」の方法論は、トレルチの歴史主義についての考察をもとに構想されているため、ヨアスの議論はトレルチの思想のアクチュアリティを示す事例として評価できる一方で、その視座からトレルチなどの思想を評価する際には、その妥当性を慎重に検討する必要があるようかもしれない。そういった点について、ヨアス本人と議論する機会を持ちたかったが、covid-19の流行により海外渡航ができなかったため、ベルリン大学を訪問することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
covid-19の世界的な流行によりドイツでの資料調査や情報収集が不可能になってしまったことから、上述したように十分なテキスト分析および方法論的検討ができていない。また、教育活動におけるcovid-19対策の負荷も研究の推進には障害となった。2019年度末の時点で本研究の達成度はやや遅れていたが、遅れがさらに大きなものとなってしまったため、現在までの評価としては【遅れている】と言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況の遅れを、2021年度だけで取り戻すことは困難であり、今年度中に国外渡航が可能になるという見込みも立ちにくいため、補助事業期間を一年延長し、2カ年かけて本研究を完遂したい。今年度は、昨年度の研究により明らかになった課題を念頭に置きつつテキスト分析を進め、個別の神学者については成果を論文として発表したい。その上で、期間延長した来年度にドイツに渡航し、追加的な文献調査、ヴァイマール期の神学思想の専門家との協議、H・ヨナス氏との方法論的な意見交換を実施して、本研究全体の成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画ではドイツへの国外旅費を計上していたが、covid-19の世界的な流行によって国外渡航ができなかったために次年度使用額が生じた。2021年度も国外渡航が可能になる見込みが立たないため、補助事業の期間延長を行い、2022年度に国外旅費として使用したい。
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