本研究の目的は、フランスの哲学者・都市社会学者アンリ・ルフェーヴル(1901-1991)によって着手された空間論の世界的な展開を視野に収めつつ、彼が晩年に提起した「都市的なものの地球化」の含意を明らかにすることにある。そのために、本研究では思想の系譜と時代状況を往還しながら、概念の意味形成を画定する思想史の手法を用いて、以下の作業を行った。 (1)「都市的なものの地球化」とその時代状況に関する分析、(2)その現代的解釈の比較検討、(3)都市化とグローバル化の相互関係に関する政治的考察 (2)に関しては、ルフェーヴルの空間論を「プラネタリー・アーバニゼーション」研究として定式化し、現代の英語圏の都市研究をリードするニール・ブレナーに着目し、その理論的含意についての検討を次の論考で行った。平田周「ニール・ブレナー『アーバニゼーション批判』」『現代思想』50(1)、2022年、70-76頁。 また、(1)と(3)に関する研究は、地理学、都市社会学、思想史の研究者の論考によって構成された下記の著作の編者の一人として、「序」と論考を執筆した。後者に関しては、ルフェーヴルが提起した「都市への権利」の概念について、とりわけ「権利」に焦点を当てた現代の英語圏の議論を検討した上で、フランスの政治哲学者、とりわけクロード・ルフォールやエティエンヌ・バリバールの権利をめぐる議論を検討し、ルフェーブルの今日的な意義を明らかにした。 平田周・仙波希望(編)『惑星都市理論』、以文社、2021年。 そのほか、この論集では十分に論じられなかったブラック・ライブズ・マター運動を中心とした世界的な反人種差別運動に関する論考、とりわけ警察の暴力に関する論考を公刊した。
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