本年度は、昨年度までに収集した資料の分析を行なうとともに、昨年度に収集することができなかった資料の収集および追加で収集が必要であると判断した資料の収集を実施した。具体的には、東京大学史料編纂所および東京大学文学部国文学研究室において、『中院通茂日記』(東京大学史料編纂所)、『律書考(本居内遠)・音律考(永田泰山)』(東京大学文学部国文学研究室・本居文庫)の二点について、資料の調査および収集を実施した。これにより、本研究課題において必要となる音楽関係の資料については、概ね収集することができた。 また、これまでに収集した資料の分析を通して得た成果を活用し、中国・復旦大学で開催された「東アジア礼学と経学国際シンポジウム(原題:東亜礼学与経学国際研討会)」において、「中村惕斎『慎終疏節通考』及び『追遠疏節通考』における「楽」関連の記述について(原題:浅議中村惕斎『慎終疏節通考』及『追遠疏節通考』中“楽”的相関論述)」という論題で発表を行なった。これにより、中村惕斎の音楽に関する基本的な認識が明らかになるとともに、なぜ、日本で儒教式の礼楽を研究・実践しようとしていたのかについても、一定の見解を示すことができた。なお、本シンポジウムにおいて発表した内容については、具体的な時期は未定であるが、今後、論文集として刊行される予定である。 本研究課題は、研究代表者が海外の研究機関に転出することとなったため、科学研究費助成事業としては研究を中断することとなってしまった。しかし、本研究課題において得られた資料を有効的に活用するためにも、今後とも収集した資料の分析を継続し、国内外を問わず、積極的に研究成果を発表していきたいと思う。
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