研究課題/領域番号 |
18K12236
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 みちこ 筑波大学, 芸術系, 准教授 (40805181)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 近代日本美術 / 古代 / 国家表象 / 国家神道 / 国宝 / 国際博覧会 / 女神像 |
研究実績の概要 |
平成30年度は研究計画に挙げた6つの研究内容から①国家表象としての女神像「やまとひめ」の図像的源泉、商業美術への応用をまとめる、②「やまとひめ」の着想源となった倭姫命の伝承と、それを祀る伊勢神宮別宮の倭姫宮の創建を古代史・近代史を横断しながら考察する、の2点に重点を置いて調査研究を遂行した。 ①については浮世絵に描かれた日本の神々の姿や明治・大正期の商業美術に表れた女神像の図像を網羅的に調べ、スキャンした画像を集成した。②については倭姫命伝承をひもとき倭姫宮の創建経緯を知るため、三重県の伊勢神宮を調査し、別宮である倭姫命宮およびその周囲にある伊勢神宮徴古館・農業館を視察した。近代以降に整備された文教地区に倭姫命宮を置いた意義を地誌的にも確認でき意義深い調査となった。併せて斎宮歴史博物館を訪問し斎王としての倭姫命について調査した。海外調査としてはイギリスに渡航し、テート・ブリテンおよび帝国戦争博物館にて戦争に関連した帝国の表象、具体的には英国の擬人像である女神ブリタニアの図像がどのようなメディアに表れているかを分析した。それらの研究成果をまとめ、台北の国立台湾師範大学にて「The Politics of Goddesses: Britannia, Marianne, and Yamato-hime」を口頭発表し、国家を表象する女神像の各国での差異について論じた。その際の質疑応答で、特に西欧では二女神の「シスターフッド」が図像としてよく見られることを指摘され、今後の課題とした。さらに日本の対外美術戦略を示す場となった国際博覧会について、美術史家桑原羊次郎に関する小企画展覧会への協力や、連動して出版したブックレットへの執筆で成果発表した。また当初2年間での完成を目指す岡倉覚三(天心)『特別保護建造物及国宝帖』英文版の現代日本語訳は予定どおり進行し報告書として発行予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した研究内容にそって本年度は基礎資料や画像の収集、現地調査などの研究リソースの蓄積に注力した。そのためアウトプットとしては口頭発表とブックレットの執筆にとどまり、査読論文の投稿ができなかった点は次年度の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目となる次年度以降は、計画書に挙げた6つの研究内容のうち平成30年度に終了した①と②を除く③から⑥までの事項を調査し考察する。具体的には次の4項目である。③ジオラマや活人画などいわゆる見世物にあらわれた古代イメージを集成する。④国家神道の成立と解体について戊申詔書、GHQ/SCAPの神道指令が視覚イメージをどのように統制したかを解明する。⑤国宝の指定、展示、出版、日本美術史の成立を「古代」をキーワードとして包括的に考察する。⑥国宝指定、博覧会等の美術行政に携わった官僚の事績を調査する。を段階的に進める。併せて上記の進捗状況で課題としたアウトプットについては次の題目で査読誌への論文投稿を準備している。(1)倭姫命の近代―見立番付「古今貞女美人鑑」にみる正史と伝承(仮)、(2)「表象」から「象徴」へ―GHQ「神道指令」におけるSymbolの翻訳をめぐって(仮)、(3)シスターフッドで読み解く二女神像と帝国の表象(仮)
|