研究課題/領域番号 |
18K12239
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
安藤 さやか 東京藝術大学, 美術学部, 助手 (90807504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カロリング朝 / 物語イニシアル / 彩飾写本 / 写本画 |
研究実績の概要 |
本研究課題の初年度にあたる本年度は、研究対象となるカロリング朝期の「物語イニシアル」を含む作例のリストアップと、所蔵機関の刊行する目録やオンラインデータベースを利用しての基礎資料作成に宛てた。特に、8世紀後半から9世紀初頭の修道院写字室で制作された作例については、従来の二次文献では言及されていない、インスクリプションの有無や挿絵や装飾の下描き、筆致や線描の質の差異、保存状況等、写本学的・美術学的分析に肝要となる詳細な情報を得るに至った。この成果には、9月にベルリン国立図書館、ベルリン国立美術館版画素描室、ザンクト・ガレン修道院図書館でそれぞれ、作品の実見調査を実施できたことが大きい。また、この実見調査と同時に、パリ国立図書館、ベルリン国立図書館、ミュンヘン中央美術史研究所、ハンブルク大学、フランクフルト国立図書館等では二次文献を収集した。未刊の学位論文や日本国内に所蔵のないカタログなどを入手し、今後の研究遂行の基盤となる貴重資料を得ることが出来た。 これらの基礎資料作成作業と並行して、対象作例のひとつである個別事例《コルビー詩編》(アミアン、市立図書館、Ms. 18C)、および、重要な比較対象となる《ヴェスパシアン詩編》(ロンドン、大英図書館、Cotton MS Vespasian A I)の分析も行った。前者については中途報告としてポスター・セッションでの報告を行い、研究成果として査読有の日本語論文2報を、後者については調査報告記事1報を所属機関の紀要で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象作例の目録化の為の基礎資料作成は、概ね当初の研究計画の通りの進度で遂行している。特に、欧州での作品実見調査が行えたことで、この資料は美術史的分析の基盤として充実したものとなってきている点は、次年度以降の分析と考察の為には大きな成果と言える。加えて、一部の作例に限定した形ではあるが、個別作例の分析と考察を査読論文として刊行するに至っている為、3ケ年の研究計画の初年度の成果としては順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
基礎資料の作成と文献収集は次年度以降も継続して行う。特に9世紀前半のローマ周辺の作例、及びメッス派、トゥール派といった9世紀中葉以降の作例に比重を置いて作業を進める。加えて、最終年度に行う、修道院間での彩飾写本の影響関係の考察に向けて、ボッビオとリュクスイユ、コルビーなどの人的・物的交流の精査を行う。
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