研究課題/領域番号 |
18K12241
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
百合草 真理子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (80813188)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イタリア・ルネサンス美術 / カトリックの内部改革 / 改革派修族 / ベネディクト会系カッシーノ会 / ポリローネ / サン・ベネデット修道院 / コレッジョ / ジュリオ・ロマーノ |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により、イタリアでの調査が実施できなかったため、計画を一部変更し、これまでの現地調査で得た情報を整理・分析するという作業が中心となった。具体的には以下の観点から、北イタリアのカッシーノ会聖堂に関する考察を行った。 まず、ポリローネのサン・ベネデット修道院については、昨年度に実見した展覧会「ポリローネのチンクエチェント:コレッジョからジュリオ・ロマーノへ」を紹介し、北イタリアのルネサンス美術とカッシーノ会に関する最新の研究動向を、所属大学の紀要に報告した(2020.12)。また、ルネサンスにおける古典主義という観点から、1510年代に行われた同修道院の食堂装飾を対象として論文を執筆し、論集『古典主義再考』(木俣元一・松井裕美編)に公開した(2021.3)。並行して、1530-40年代に行われた同修道院附属聖堂の改築事業を対象として、それに携わったジュリオ・ロマーノの晩年の芸術展開との関連から考察を進めるため、文献資料の精査を行った。先行研究でほぼ未調査の身廊フリーズの装飾に関しては、細部の図像等を確認する必要があり、現地での実見と丹念な調査が不可欠となる。 さらに、パルマのサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂、ピアチェンツァのサン・シスト聖堂、ポリローネのサン・ベネデット聖堂という各カッシーノ会の修道院建築の装飾を対象として行った個別の事例に関するこれまでの研究成果を、より広い視野から、15世紀末から16世紀前半にかけて行われた同会の修道院建築の再建事業の文脈へと位置づけることを目指し、関連の文献資料の収集と整理を行った。この方向からの考察は、M-A. Winkelmesの研究(1995)が基礎となるが、本研究課題で取り組んでいる機能論的観点からの解釈を加えることで、先行研究による理解を大きく進展させる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、本年度が最終年度であったが、新型コロナウィルス感染症による渡航制限により、当初に予定していたイタリアでの調査が実施できなかったため、大幅に計画に遅れが生じ、補助事業期間の一年間の延長を申請した。 本年度は、文献資料の精査を進め、ポリローネのサン・ベネデット修道院に関する一部の研究成果に関しては、論文を通して発表した。また、他のカッシーノ会聖堂の建築及び装飾については現在、これまでの調査に基づいて一連の研究対象を体系的に考察するための調書を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である令和3年度は、カッシーノ会に関するこれまでの研究成果を総合し、16世紀イタリアにおけるカトリックの内部改革の文脈に位置づけることを目指す。『コレッジョの天井画:北イタリアにおけるルネサンス美術と宗教改革』と題した単著を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、当初予定していたイタリアでの調査を実施することができなかったため。
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