研究課題/領域番号 |
18K12248
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
落合 桃子 福岡大学, 人文学部, 講師 (40434237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 四大陸 / アジア / 西洋美術 / バロック |
研究実績の概要 |
西洋美術において「アジア」はどのように表象されてきたのか。これについて本研究では、主に16 世紀から18 世紀のヨーロッパで制作された四大陸図像(ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカ)中の「アジア」寓意像の収集・分析を通じて考察する。 一年目となる平成30年度は四大陸を主題とする絵画・彫刻等の作例収集を行った。平成30年9月2-10日、平成31年2月28日-3月14日の日程でベルリン、ミュンヘン、ヴュルツブルク、ローマ、パリを訪れ、主要作例を実見し、ミュンヘン中央美術史研究所とベルリン国立図書館では文献調査を行った。写真撮影を行い、画像データも収集した。合わせてこれらの作品に関する文献資料の収集を行った。 近世のヨーロッパでは、大航海時代による世界観の拡大やキリスト教の世界的広がりを背景に、四大陸を主題とした絵画や彫刻等が数多く制作された。リーパの図像学辞典『イコノロギア』(初版1593年、1603年)の「アジア」は香炉を持ち、宝石など高価な産物を身につけ、ラクダとともに表されている。近世におけるアジア像はこうした図像伝統に則って制作された。一方、ベルニーニ《四つの河の噴水》やルーベンスの《楽園の四つの河》に見られるように、四大陸は各大陸を流れる大河を結び付けられることもあり、アジアはガンジス川によって表現されることが多かった。四大陸を主題とした天井画の作例にアンドレア・ポッツォ《聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光》(サンティニャツィオ聖堂天井画)とティエポロによるヴュルツブルクのレジテンツ(司教宮殿)「階段の間」天井画がある。ここでは全世界を支配するものとしてのカトリック教会の権力を視覚化するために四大陸主題が取り上げられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の平成30年度は当初の計画どおり、16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで制作された四大陸図像の基本作例の収集を行うことができた。平成30年9月2-10日及び平成31年2月28日-3月14日の調査旅行では、ベルニーニ《四つの河の噴水》、ヤン・ファン・ケッセルとエラスムス・クエリニス《四大陸》、ヴェルサイユ宮殿アポロンの間天井画、ポッツォ《聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光》、ティエポロ「階段の間」天井画、カルポー《天球を支える世界の四大陸》などの主要作例を実見し、写真撮影を行い、画像データを収集した。ドイツのベルリン国立図書館とミュンヘン中央美術史研究所では文献資料の調査を実施した。その他、調査に必要なノートパソコンと複合型プリンターを購入し、研究環境を整備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
アジアの擬人像は一般的に香炉を持ち、ラクダとともに描かれるのが定型となっていたが、交易などを通じてアジア諸国に関する情報が入ってくることによって、そうしたイメージは徐々に変化していったと考えられる。西洋近世絵画の図像目録であるA. PiglerのBarockthemen(Budapest, 1974)などを参考に「アジア」図像の収集を継続しつつ、ヨーロッパで出版されたインドや中国、日本などのアジアに関する書籍等の調査も行う。具体的な作例として、ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ(1696-1770)のヴュルツブルク司教宮殿「階段の間」天井画を軸に検討を進めたい。これらの成果を踏まえ、西洋美術における「アジア」のイメージに関するテーマ研究をまとめることを目指す。成果については論文や学会発表の形で公表し、講演会などの機会を活用して広く一般に向けても発表していく。
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