研究課題/領域番号 |
18K12248
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
落合 桃子 福岡大学, 人文学部, 講師 (40434237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アジア / 四大陸 / ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ |
研究実績の概要 |
西洋美術において「アジア」はどのように表象されてきたのか。これについて本研究では、主に16 世紀から18 世紀のヨーロッパで制作された四大陸図像(ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカ)の「アジア」寓意像の収集・分析を通じて考察している。 2年目となる2019年度は、「アジア」図像の収集を継続しつつ、これまでに収集してきたイメージの分析を行った。アジアの擬人像は『イコノロギア』(初版1593年、1603年)にあるように、香炉を持ち、ラクダと共に描かれるのが定型となっていた。四大陸はそれぞれの大陸を流れる大河と結びつけられることもあり、アジアはたいていガンジス川によって表現された。18世紀の作例である、ティエポロのレジデンツ「階段の間」天井画(1752-53年)では、アジアが象に乗った姿で表されている。そして19世紀のカルポーの彫刻《天球を支える世界の4つの部分》(1868―72年、1874年)では、アジアが(本来男性の髪型である)辮髪姿の女性として表現された。このように「アジア」を表す女性像は、元々ラクダと共に描かれていたが、18世紀には象に乗り、19世紀後半になると辮髪姿となっていった。こうした過程を丁寧に追っていくことで、ヨーロッパにおける「アジア」の概念が、西アジアから中央・東南アジア、そして東アジアへと次第に広がってきたことを浮かび上がらせたい。 これまでの研究成果については、愛媛大学人文学会公開講演会(2019年9月7日開催)で「西洋近世美術における「アジア」のイメージ-ヴュルツブルクのレジデンツ「階段の間」天井画を中心に」と題して発表を行った。また、2019年8月12日から22日までドイツのハンブルク美術工芸博物館等にて調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の2020年度は、当初の計画どおり、前年度に収集した「アジア」図像の分析を行うことができた。とくにティエポロのレジデンツ「階段の間」天井画(1752-53年)を軸にして検討することで、「アジア」図像の変化の一端を明らかにできた。公開講演会を通じて研究成果を広く一般の皆様に知っていただくことができた。海外調査を進める過程で、ドイツで活動した刀装具研究家、原震吉に関する史料を見出すことができ、これについて国際学会で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2020年度は、「アジア」図像の収集・比較分析を継続するとともに、ヨーロッパで出版されたインドや中国、日本などのアジアに関する書籍等の調査も行っていく。3年間の研究成果として、西洋美術における「アジア」イメージに関する論考をまとめ、学会発表や論文の形で発表し、成果を社会に還元していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月5―9日の日程でアメリカのボストン美術館とピーボディ・エセックス博物館における調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大防止のためキャンセルし、取消料を差し引いた金額が返金となったため、次年度使用分が生じた。2020年度に改めて調査を行う予定である。
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